HOME9.中国&アジア |東南アジアの熱帯林伐採事業へのファイナンス、2010~15年で総額約4兆円。日本の金融機関は、マレーシア、中国に次ぎ3番目の資金源。みずほFGが日本勢では最大融資先。環境NGO調査(RIEF) |

東南アジアの熱帯林伐採事業へのファイナンス、2010~15年で総額約4兆円。日本の金融機関は、マレーシア、中国に次ぎ3番目の資金源。みずほFGが日本勢では最大融資先。環境NGO調査(RIEF)

2016-09-21 00:11:10

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 国際環境NGOのレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)などは、東南アジアの熱帯林伐採事業を展開する50の企業に、2010~15年の間に380億㌦(約4兆円)の資金を内外の金融機関が提供、そのうち日本の金融機関は、マレーシア、中国に次ぐ3番目に多い資金源だったとする調査結果をまとめた。個別金融機関では、みずほフィナンシャルグループが全体で3番目の融資額。

 

 調査は、RANのほか、インドネシアの環境NGOのTuKインドネシア、オランダのESGコンサルタントのプロフンド (Profundo)の3者が協力して実施した。調査結果は、オンライン・データベース・サイトとして公開されている。http://forestsandfinance.org/

 

 調査は、2010 年から 2015 年の間に、インドネシアやマレーシアなどの東南アジア地域で、パーム油、紙パルプ、ゴム、熱帯材の生産などの事業を展開している50の企業を特定、それらの活動に貸し付けや債券引き受けなどで金融機関の資金供給状況を調べた。50社には、日本の丸紅、伊藤忠商事、住友商事、王⼦ホールディングス、住友林業などが含まれる。

 

 熱帯林伐採事業は、合法、非合法にかかわらず、生態系に影響を及ぼし、伐採による温室効果ガスの発生、森林の吸収能力低下、水資源の枯渇等の環境激変を引き起こす。また、周辺住民の生活基盤や健康にも大きな影響を与えるリスクがある。また取引に関連して賄賂などの不正の横行も指摘されている。

 

 これまでも指摘されているにもかかわらず、東南アジアなどでの熱帯林伐採事業は拡大を続けている。その結果、世界は2000年から2002年の3年間だけで、日本列島の3倍の規模の熱帯林を消失、その多くが東南アジアに集中したという。2015年にはインドネシアでの非合法の森林焼却による煙害が地域全体を覆い、社会問題になった。

 

 RANなどは、今回の調査結果を、サイトに各金融機関の名前、個別事業への投融資状況、投融資総額、金融機関のプロフィル、さらには株主などの情報を掲載し、一覧できるように開示した。 熱帯林伐採に投じられる資金規模が、2010~15年で380億㌦に達したほか、2016 年初めの時点で、債券や株式で 140 億㌦の追加資金供給を受けているという。

 

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 日本の金融機関では、みずほフィナンシャルグループが融資量でマレーシアの2銀行に次いで3番目の規模となったほか、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグルプの3メガバンクの融資量が突出している。

 

 それ以外でも、三井住友信託銀行、農林中金、りそなホールディングス、さらには王子や商社等への貸し付けで、多くの地銀の名も列挙されている。また債券引き受けで野村、大和、岡三の証券会社、生保ではT&Dホールディングス、朝日生命保険などが名指しされている。

 

 日本の金融機関全体の融資総額は、40億9000万㌦(4300億円)で、マレーシア(77億3000万㌦)、中国(62億1000万㌦)に次いで3番目。個別金融機関では、マレーシアのMalayan Banking(27億1600万㌦)、CIMB(25億4400万㌦)に次いで、みずほFBが16億3500万㌦だった。日本勢の中で、みずほは突出している。

 

 また、RANJapanらは、昨年、国連責任投資原則(PRI)に署名した年⾦積⽴⾦管理運⽤独⽴⾏政法⼈(GPIF)にも注文を付けている。GPIFが今回、対象となった熱帯林伐採事業に関連する丸紅、伊藤忠、王子、住商、住友林業などの事業会社と、資金を供給する日本の金融機関の株を大量保有しているためだ。責任投資の視点からのGPIFの検証は適切かどうか、と問いかけている。

 

 今回のリストで名のあがった日本の金融機関は、日本の事業会社にだけ投融資をしているのではない。サイトのケーススタディで紹介されているように、インドネシア で第3位のパーム油植林会社のインドフード(Indofood)に対して、⽇本の3メガバンクはそろって資⾦を提供している。そのインフード社の農園では児童労働を含む深刻な労働違反であること が最近確認されたと指摘している。

 

 また三井住友FGの融資先となっている王子ホールディングスの関連会社コリンティガ・フタニ社(PT Korintiga Hutani) は、⼟地をクリアするために違法に⽕を⽤いたり、村⺠を移住さ せたとして問題が浮上しているという。

 

 同サイトでは、各金融機関の森林部門でのESGリスク評価等のスコアリングも示している。ただ、日本の金融機関の多くは、森林部門に特化した ESG リスク方針が制定されていないことから、欧米の金融機関に比べて、低いスコアしか得られていない。

 

 RAN の森林と金融キャンペーン・ディレクタ ーのトム・ピッケン氏は、 「調査の対象となった金融機関の多くは、顧客企業が実際に森林法に従っているか、地域社会の権利を尊重しているかど うかのチェックをほとんどすることなく、紙パルプ、パーム油、ゴム等の⽣産および伐採等の熱帯林リ スクのセクターに年間数十億㌦の資金を注ぎ込んでいる」「調査結果は、日本のメガバンクも金融サービスによる生態系への壊滅的な影響を見て見ぬふりをし続けていことを示唆する」と指摘している。

 

 また、金融庁などの金融規制当局に対しても警鐘を鳴らしている。規制当局は、適切な投融資を金融機関に求め、不遵守の場合には強力な罰則を導⼊するとともに、金融機関が、森林部⾨の顧客企業に対する適格なデューデリジェンスに基づく適格審査プロ セスを実施しているかどうかをチェックすることなどを求めている。

http://forestsandfinance.org/