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米上院で「国立グリーンバンク法案」提出。州レベルのグリーンバンクへ資金供給し、全米に同バンク設立を目指す。パリ協定発効後のクリーンエネルギー事業促進に(RIEF)

2016-09-30 02:21:55

Greenbankキャプチャ

 

   米上院議員が、米国でクリーンエネルギーへの資金供給を行う国立銀行のグリーンバンク設立法案を上院に提出した。州や地方レベルで設立されているグリーンバンクに対し、資金支援を行うことを目的とした銀行で、500億㌦の資金力を保有するとしている。

 

 法案を提出したのは、Chris Murphy議員(コネチカット州)、Richard Blumenthal(同)、Sheldon Whitehouse(ロードアイランド)の3上院議員でいずれも民主党議員。法案は「The Green Bank Act of 2016」。

 

 すでに上院では、 同じ民主党のChris Van Hollen(メインランド州) 議員が7人の共同提案者とともに、7月に「H.R.5802. the Uninted States Green Bank Act of 2016」の法案を提出している。Murphy議員らのグリーンバンク法案は、州レベルでグリーンバンクを設立しているコネチカット州の実例をモデルとして、連邦での拡大を目指す方向性を示している。

 

 コネチカット州のグリーンバンクは2011年の設立で、これまで8億㌦以上の資金をレバレッジを効かせて動かしてきたという。ニューヨーク州のバンクは、5億1800万㌦以上の資金をクリーンエネルギー開発等に投じてきた。

 

 グリーンバンクは、英国で2012年に公的な銀行(Green Investment Bank)として設立されている。米国ではこの英国での設立に先んじて、2009年に最初の法案が提出されている。2014年にも再提案された。しかし、共和党優位の議会での承認は見送られ続けている。

 

 今回、相次いで法案が再提出されたのは、パリ協定の発効を踏まえて、地方レベルでの再エネ投資や省エネ事業を促進するために、グリーンバンクを全米に展開して柔軟な資金供給網を築こうという狙いがあるとみられる。

 

Greenbank2キャプチャ

 

 米国ではこれまで、連邦議会でのグリーンバンク設立審議は見送られてきた。だが、州レベルでは、コネチカット州のほか、カリフォルニア、ハワイ、モントゴメリー郡(メリーランド州)、ニューヨーク、ロードアイランドなどで設立されてきた。これら州や郡レベルのグリーンバンクは、家庭や企業が地域で再生可能エネルギー事業を導入する際に、低利資金を供給する活動を展開している。

 

 国立グリーンバンク法案は、こうした州や郡レベルのグリーンバンクの活動を支援するため、低利優遇資金を供給する。加えて、グリーンバンクを設立していない他州などでの設立促進活動も展開する。米議会では、老朽化しているインフラ整備のための国立インフラ銀行構想もあり、グリーンバンク法案はこれらの新たな資金供給源計画と融合していく可能性もある。

 

 Murphy議員は「コネチカット州のグリーンバンクの経験に基づけば、同バンクは再エネ等を導入する人々のコストを削減し、仕事を創り出し、環境を改善するために官民セクターの活動を統合する機能を果たす」と指摘している。

 

 提出された各法案で共通するのは、グリーンバンクは公的資金を供給することによって、それよりも多くの民間資金をクリーンエネルギー開発事業等に誘導するレバレッジ機能を重視している点だ。またバンクが供給する金融的手段は、ローンのほか、信用保証、証券化手法なども想定されている。

 

 国立グリーンバンクの資金規模は、当初100億㌦レベルでスタートし、最大規模で500億㌦の資金供給力に高める、としている。また国立バンクは基本的に資金供給役に徹し、州立バンク等が各地域でのグリーン事業の選別や運営に関する判断等を担う形の、役割分担を想定している。

 

  コネチカット州グリーンバンクのCEO、Bryan Garcia氏は、「国立グリーンバンクは、州レベルのクリーンエネルギー成長を加速するための”ゲームチェンジャー”になるだろう」と期待を寄せている。米国の民間金融機関もクリーンエネルギー事業への投融資は実施しているが、公的でかつ専門的なグリーンバンクを組み合わせることで、迅速で大規模な資金供給ができるという判断だ。

 

 日本ではグリーンバンクの設立は「ほぼ想定外」だろう。地方銀行との合併を推進している金融庁が、新たな銀行の設立を認めるとは考えにくい。公的金融機関の設立も、既存の政府系金融機関との仕切りが難しいとの理由で、設立案を提案する政党、議員はまず出てこないだろう。

 

 しかし、日本よりも市場主義の米国が、新たな国立銀行を設立してでも、民間資金を誘導しようとしているのに対して、日本は、民間金融機関も米国ほど市場主義型ではない。そうした金融環境で、クリーンエネルギーなどの新分野に、迅速かつ大規模な資金供給が可能になるのか、という疑問が浮かぶ。

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