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CDP 投資家向け情報提供を有料化に切り替え。大規模機関投資家は年間975㌦。まず米欧で実施、日本での適用も視野に(RIEF)

2016-10-11 01:42:35

CDPキャプチャ

 

  機関投資家の支援で、投資先企業の温室効果ガス排出量などの環境データの情報収集活動を展開している英非営利団体のCDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)は、これまで無料だった投資家向けの情報提供を有料化する。

 

 CDPは2000年以来、企業から無料で情報を集めており、それらの情報を加工するなどして投資家に無料で提供してきた。今回の有料化について、CDPのCEOのPaul Simpson氏は、英国の情報サイトに対して、「われわれの情報開示内容の高度化と、開示自体のメインストリーム化に要するコスト対応」と説明している。

 

 情報利用の有料化はまず、10億㌦以上の資産を保有する機関投資を対象に年間975㌦(約10万円)を徴収する。CDPは年初から、CDPのサイトで情報開示を希望する企業や機関投資に対して年間管理費として975㌦の徴収を始めており、それと同額とする。

 

 有料化地域は北米と欧州で始めるという。いずれ対象資産の引き下げのほか、対象地域の拡大で、日本、アジアも含まれる可能性が高い。CDPに署名している827の機関投資家すべてが有料化に同意すると、74万㌦~80万㌦の年収が確保される。

 


 CDPは世界の5600以上の企業を対象にして、気候変動、水資源、森林の3分野に関する各企業の環境負荷情報を毎年、アンケートで集め、それらを分析して開示している。CDPが投資家等に提供する情報は、アンケートを元にした企業ランキングをはじめ、3分野の回答分析、対象企業のスコアカードなど。

 

 元々の収集データが無料であり、かつCDP自体が、企業の環境意識向上を目指す非営利活動としてスタートしたことなどから、これまで情報提供は無料だった。

 

  しかし、これまでも、集めた情報を、Trucostや Sustainalytics、 South Poleなどの独立系のESG情報企業に分析素材として販売し、年間37万㌦の売り上げをあげているほか、 約50のパートナー投資家の要請に応じたテーラーメイドの分析事業も有料で展開している。

 

 それらに加えて、今回のデータアクセスの有料化ということになる。データ有料化については、スウェーデンの公的年金や企業年金等とCDPが先月、価格問題を議論したとの報道が流れたことで確認された。


 
 CDPと議論したのは、スウェーデン公的年金のAP2、AP4のほか、Volvoグループ、SKFなどの年金基金とされる。CDPは有料化問題で、主要投資家とワークショップ等を実施しており、その一環とみられる。有料化を前提に、どのような開示情報が適切かどうかといった議論を展開した模様。CDPは議論があったことは認めている。

 

 CDPが情報開示の有料化に踏み切るのは、CEOが説明する情報分析コストの上昇問題だけではなさそうだ。CDP情報の付加価値化を高める必要に迫られている面もある。CDPのデータ化は、企業に対する直接のアンケートを積み上げて分析する手法だ。

 

 この手法では網羅性はあるが、企業側が答える内容はあくまでも自主的で、集められたデータの大半は第三者の検証を経ていない。またCDP自体に情報開示の強制権限はないので、回答しない主要企業も一定数が存在する。

 

 一方、CDPが最重視してきた温室効果ガス排出量および、その企業価値への影響については、金融安定理事会(FSB)が現在、タスクフォースを設け、その情報開示のあり方を議論している。タスクフォースの報告書公表は年明けになるとみられる。

 

 仮に報告書が対象企業に対して、一定の温室効果ガスの情報開示の方向性を示す内容になるようだと、CDPによる自主的な情報よりも、信頼性が高い情報が企業から直接市場に示されることになる。そうなると、CDPの活動も影響を受ける可能性がある。

 

 そのため、CDPはFSBタスクフォースの活動を先取りする形で、産業別の投資家戦略分析を拡大する方針も示している。特定セクターごとの温暖化のリスクと機会を問う質問状のフォーマットを来年末には完成させることを目指して準備しているという。

 

 CEOのSimpson氏は「われわれはFSBタスクフォースのベストパートナーになれるよう目指している」と述べている。FSBの結論をCDPに取り込んで、ビジネス化しようという狙いもあるようだ。CDPは非営利団体という枠をすでに超えて、ビジネス機関化しているとの見方もある。

https://www.cdp.net/ja/info/about-us