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グリーンボンド市場、「トランプ・リスク」を超えて、2020年には現在の10倍増の1兆㌦規模に。英非営利団体Climate Bonds Initiativeが強気の推計(RIEF)

2016-11-24 20:13:03

CBIキャプチャ

 

 英国の非営利環境金融団体のClimate Bonds Initiative(CBI)は、今年のグローバル市場でのグリーンボンドの発行額が昨年より倍増し、800億㌦~1000億㌦に達するとの推計を示すとともに、2020年には10倍の1兆㌦規模の拡大する可能性を示した。

 

 CBIの推計によると、今月現在で、グリーンボンドの発行額は749億㌦に達している。昨年の年間実績が422億㌦だったから、すでに7割以上上回っている。今後、発行増が予想されるのは、中国市場である。

 

 今月に入って、中国の5大銀行の一つである交通銀行(本社、上海)が中国人民銀行からグリーンボンド発行枠として700人民元(約101億㌦)を認められた。また、商業銀行の青島銀行が今年、二度目の発行を予定、三峡ダムを管理運営する中国長江三峡集団公司公社も、二度目の発行を予定している。

 

 中国市場で注目されるのは、年間に複数回の発行を行なう金融機関や企業が増えている点だ。それだけ再生可能エネルギー事業などへの資金需要が国内で、急拡大していることを表す。

 

 中国市場だけではない。COP22を開催したモロッコで同国の官民ベンチャーであるMASENが、太陽光発電事業の資金調達のため、初のグリーンボンドを発行したことで、これまでグリーンボンドの発行が遅れていたアフリカ市場がにわかに活気づいてきたこともある。

 

 これまで、アフリカでのグリーンボンド発行は、南アフリカのヨハネスブルク市と、国際機関のアフリカ開発銀行(AfDB)の発行しかなかった。モロッコに続いて、ナイジェリアも年明けにもグリーンボンド国債を発行する準備に入っているという。

 

 こうした動きから、CBIはグリーンボンド市場がこれまでの米欧中心の発行から、パリ協定の発効を受けて、温暖化対策ニーズが今後大きく膨らむ新興国、途上国での発行に一段とシフトしていくとみている。このため、グローバル市場全体での発行額は、来年、再来年と、倍増ピッチで急拡大を続け、2020年には1兆㌦規模に膨らむと強気の推計をしている。

 

 地球全体の温度上昇を産業革命前からの2℃未満に抑制するというパリ協定の目標を達成するには、各国が協定で約束した国別削減目標を超えた追加的な対策実施が求められる。その分、途上国等に資金需要が多いことになる。一方で、米国の次期大統領のトランプ氏は、選挙期間中に宣言していたパリ協定からの離脱については、トーンダウンさせている。だが、グローバルな温暖化対策資金の追加拠出を認めない可能性が高い。

 

 そうした「トランプリスク」の存在は、先進国から途上国への公的資金の円滑な流れが滞る懸念を高めるが、そのことは逆に、民間市場の資金への期待が高まることでもある。グリーンボンドが新規の投資商品として長期投資家にとって魅力的な商品に成長すると、公的資金を大きく上回る資金が、途上国に流れ込む可能性もある。

 

 CBIの推計通りの展開になるかどうかは、今年の中国市場の勢いが来年も続き、トランプ新大統領が「意外とグリーンな姿勢(?)」に変身するかという、二つの不確定要因を、まず、見極める必要がありそうだ。

 

https://www.climatebonds.net/