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国連「緑の気候基金(GCF)」 今年の途上国温暖化対策への資金拠出額13億㌦。目標の半分止まり。トランプ次期米大統領の出資圧縮懸念が大きな“影”に(RIEF)

2016-12-18 18:00:38

GCFキャプチャ

 

  トランプ次期米政権の反温暖化姿勢が早くも影響を及ぼし始めた。国連の「緑の気候基金(Green Climate Fund:GCF)」は 先週末、新たに途上国の温暖化対策への資金供与を決め、年間全体で13億㌦となった。ただ目標の25億㌦の半分程度にとどまった。トランプ氏がGCFへの出資拒否の姿勢をとる可能性もあり、先行き不透明感が出ている。

 

 GCFは先週末に太平洋のサモアで、第15回目の理事会を開いた。気候変動で洪水リスクにさらされるサモアでのVasigano川調整池の適応策強化に、UNDPとともに5770万㌦を拠出するほか、クック諸島での再生可能エネルギー事業にアジア開発銀行と共同で1700万㌦など、全体で8つの事業に、総額3億1524万㌦の拠出を決めた。

 

 この結果、今年全体での途上国での適応策と緩和策への資金支援は約13億㌦となった。理事会共同議長の南アフリカのZaheer Fakir氏は「今年の実績は、気候変動ファイナンスの規模拡大という点で、GCFが着実に役割を果たしていることを示した」と述べた。

 

 ただ、ドイツの環境NGOのGermanwatchのDavid Eckstein氏は、「どの国も途上国の申請を評価するプロセスを簡易にする手順を示していない。GCFへの申請手続きの複雑さは最貧国等にとって障壁となっている」と指摘している。

 

 手続き面での「官僚主義」の色彩に加えて、最大の出資国である米国が、次期政権の下で拠出継続するかどうかが大きな影となって浮上している。資金面の予定が狂うと、GCFの気候変動ファイナンスとしての機能が果たせなくなる懸念が出ている。

 

  
 トランプ氏は大統領選挙期間中、パリ協定からの離脱に言及するなど、温暖化対策と逆行する姿勢を示してきた。協定離脱については選挙勝利後、発言を控えているが、環境保護庁(EPA)長官に温暖化懐疑派の起用を決めるなど、基本的に反温暖化政策に転じる方針は変えていない。

 

 特にGCFをはじめとする国際的な温暖化対策への米国の資金拠出を全面的に見直す姿勢を鮮明にしている。トランプ氏は選挙期間中、ゲティスバーグでの演説で、「国連の気候変動計画への米国の資金拠出をキャンセルし、その資金を国内の水道・環境インフラの整備に回す」と宣言している。

 

 米国はGCF全体の出資額100億㌦のうち、最大の30億㌦の出資を予定している。しかし、このうち、これまでに実際に出資したのは5億㌦にとどまっている。米国が残りの出資を見送ると、他の出資国にも影響が及び、GCF全体の資金計画が宙に浮くリスクもある。

 

 GCFだけではない。米国は気候変動枠組条約(IFCC)事務局に対して、過去5年間に最大の支援国として500万㌦以上を拠出している。米議会の多数派を継続する共和党は明確には拠出の制限を示してはいないが、トランプ次期政権の方針と歩調を合わせる可能性もある。

https://www.greenclimate.fund/-/gcf-concludes-final-meeting-for-2016-approves-usd-315-million-in-fundi-1?inheritRedirect=true&redirect=%2Fhome