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昨年のグリーンボンド発行総額929億㌦ 英Environmental Financeの推計。前年比2.2倍増。中国モノが3割を占める(RIEF)

2017-01-21 11:44:27

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  英Environmental Finance誌は2016年のグリーンボンドの発行総額が前年比2.2倍の929億㌦に上ったとの推計をまとめた。そのうち、中国勢の発行が約3割の320億㌦を占め、中国が最大のグリーンボンド発行市場であることが改めて確認された。

 

 同誌がまとめるグリーンボンドデータベースによると、発行本数は313本で、発行体の数は162社。この中には、日本の三菱UFJフィナンシャル・グループや野村総合研究所などの発行分も含まれる。平均発行額は3億㌦。年間を通して発行が続いたが、特に第四四半期は302億㌦と、四半期発行額としては過去最高額となった。

 

 グリーンボンドは2017年に第一号が発行されてから10年の若い市場だが、2011年から14年にかけては毎年、新規発行額が3倍増の急成長をみせた。2015年は伸び悩み17%増に終わった。16年は15年の倍増となったことで、再び市場のモメンタムが高まってきたことを表している。

 

 ただ、16年から本格的に始まった中国でのグリーンボンド発行で全体の発行額が引き上げられたことは間違いない。中国勢の発行分を除くと、総額は625億㌦で、前年比伸び率も40%増にとどまる。

 

 中国のグリーンボンドは人民銀行が制定する国内ガイドラインに立脚したものが多い。同ガイドラインは一部の石炭火力発電を「クリーンコール」として、ボンドの資金使途対象にするなどの課題が指摘されている。このため欧米の機関投資家などは中国モノへの投資に慎重なところが少なくない。

 

 しかし、中国企業や金融機関などのグリーンボンド発行意欲は今年も強く、今年の中国全体の発行額は昨年の倍になると予測されている。中国市場での資金使途についても、欧米投資家を意識して、国際的なグリーンボンド基準であるグリーンボンド原則(GBP)やClimate Bonds Initiative(CBI)の基準に準拠したものが増えそうという。

 

 2016年の市場の特徴は、発行国が27か国に増えた点も指摘される。新たにグリーンボンドを発行した国は、コロンビア、モロッコ、コスタリカなどの中進国、フィンランドなど。いずれもパリ協定で国際的に公約した国内の温暖化対策のための資金調達源としてグリーンボンドを位置づけ始めたといえる。

 

 発行体別では、民間銀行の発行が目立った。15年は民間銀行全体で65億㌦だったが、16年は一気に5倍近い310億㌦に達した。この場合も中国の中国銀行、中国通信銀行などの金融機関の発行が底上げした形だ。

 

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 今年の発行市場の動向については、多くの関係機関が900億~1500億㌦での予測になっている。慎重派は、16年がパリ協定の発効がモメンタムとなったが、今年は米国がトランプ政権になり、温暖化対策に消極的になるとの見方がベースにある。一方、積極派は、米国要因を考慮しても、グローバルには温暖化対策の必要性は否定できず、特に中国市場のグリーン事業ニーズはさらに拡大する、との読みが中心だ。その中で、日本市場はどうなるか?