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過去最大発行額の仏グリーンボンド国債。日本生命、三井住友信託銀行も投資。フランスは財務省がグリーンボンド政策を政府内で主導。基準は民間のGBPに準拠。官民の役割を明確化(RIEF)

2017-01-28 22:24:10

PIAキャプチャ

 

 フランスは70億ユーロ(約75億㌦)という過去最大額のグリーンボンド国債を発行したが、ボンドへのグローバルな投資家に日本生命、三井住友信託銀行が加わっていたことがわかった。同国のグリーンボンド政策は、財政・金融担当の財務省を中心に、政府内の省庁間連携を図る形で推進され、安定的であることも市場で好感されている。

 

 政府がグリーンボンドを国債(グリーンOAT)として発行したのは、昨年12月のポーランドに次ぐ。ただ、発行額はこれまでの最高額を6割も上回る「マンモス発行」(Environmental Finance誌)となった。規模が大きいだけでなく、償還期間もこれまでにない22年間と超長期。フランスの格付けはAA(S&P)で優良債券であるうえ、大規模発行で流動性が高いことから、発行額の3倍以上の応募があった。

 

 国債だが、民間金融機関が設定したグリーンボンド原則(GBP)に準拠していることも、グローバル投資家の信頼につながったといえる。また資金使途やリスク管理、余剰資金の適正管理等が適正かどうかは、ESG評価会社のVigeoEirisが評価した。

 

 日本の2金融機関以外は、AXA、BNPパリバ、クレディ・アグリコル、Amundiなどフランスの主要金融機関のほか、米国のBlack Rock,JP Morgan Asset Management、英国のBarclays Treasury、Standard Life Investments、オランダのKempen Capital Management、APG Asset Management などグローバルな投資資金が集まった。さらに環境NGOのWWF Franceも投資した。

 

 フランスのグリーンボンド政策は、ボンドの発行だけではない。政府のグリーン投資・減免税計画である 「Programme d’Investment d’Avenir(PIA)」への資金供給と連動している。現行のPIAは130億ユーロと設定されていることから、年内に残りの60億ユーロ分が追加発行されるとの見方が強い。

 

  フランスはパリ協定で、2030年に温室効果ガスの排出量を1990年比40%削減を約束している。グリーンボンド国債は、そのフランスの「2℃戦略」の中心の政策手段と位置付けられている。戦略を実践するPIAでは、4つの分野に国としてのグリーン投資・支出を計画している。

 

 それらは、①クリーンエネルギーや省エネ事業への減免税の支出②クリーン投資技術などへの投資支出③研究開発への国家援助を含む運営経費④公共交通機関などへの補助金等による介入資金支出、である。

 

フランス財務省
フランス財務省

 

 これらの資金使途先への、資金配分の選別については、政府内の省庁間ワーキンググループで検討する。どこかの国のように、同じような政策を競い合い、同じような資金配分で重複する事態を避けるため、財務省が軸になって、省庁間の調整を図っている。

 

 それらの資金使途と、事業の成果が適正かどうかは、政府内での点検ではなく、外部の監査法人がチェックする。また、独立したグリーンボンド評価協議会(GBEC)が監査する年次影響報告を公表し、それらの情報は財務省のサイトで開示される。

 

 政府がやるべき仕事は、民間と重複するようなルールづくりではない。すでに民間のルールがあれば、それを有効活用して、自らも信頼度の高いグリーンファイナンスを実践し、それらの資金をグリーン事業開発・育成に循環させることだろう。「グリーン政策は、フランスに学べ」と言いたい。