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アイルランド下院。同国のソブリンファンドの運用から化石燃料関連業種を除外する法案を可決。上院も通ると、夏にも世界初のDivestment法が成立へ(RIEF)

2017-01-29 21:24:58

Irelandキャプチャ

 

 アイルランドの国会(下院)は、同国の約80億ユーロ規模の資産を保有するソブリンウェルスファンドの投資対象から、化石燃料会社株等を除外する法案を可決した。上院の可決を残しているが、順調に進めば、今夏にも成立する。国の資金運用の対象から化石燃料関連企業株や債券を外すDivestment(資金引き揚げ)法を設けるのは、同国が初めてになる。

 

 法律案(Fossil Fuel Divestment Bill 2016)は、独立会派のThomas Pringle氏が提案していた。先週の下院での採決され、賛成90対反対53の賛成多数で承認された。法案では、同国のソブリンファンド「Ireland Strategic Investment Fund’s (ISIF)」は、化石燃料関連資産には直接にも、間接にも投資しないことを義務とする。5年の経過期間を置き、2022年までに資産の整理をする。

 

 法案は下院で可決されたが、与党のFine Gaelは反対した。同党党首で首相のEnda Kenny氏が率いる政府も反対している。反対理由は、すでにISIFは持続可能で、責任投資を重視した投資政策をこれまでも実施してきており、資産のうちエネルギー投資の大半は、再生可能エネルギーに向けられている、としている。

 

 政府の判断には、パリ協定発効後の国際情勢と金融市場の評価したものの、新たに誕生した米トランプ政権が温暖化政策の展開に消極的であるほか、先行き、金融市場の混乱が起きる可能性も予想されることなどを踏まえたとみられる。収益確保の点からもドラスティックな運用転換は避けたほうがいいとの判断のようだ。

 

 コンサル会社のTrócaireなどによると、ISIFは2015年中に化石燃料関連企業の保有資産を約2200万ユーロ分売却し、ポートフォリオに占めるカーボンフットプリントを48%改善した。

 

 同年12月末時点での化石燃料関連企業は132社分、1億3300万ユーロとなっており、ISIFが保有する株資産の12.2%に減っている。その中には、トランプ政権で国務長官候補となっているレックス・ティラーソン氏がCEOを務めた米石油メジャーのExxon Mobileなどの株も含まれているとみられる。

 

 法案の成立までに、政府と議会のスタンスをどう調整するかが課題だ。法案はこの後、下院の金融・公的支出・改革委員会に付託され、ステークホルダーヒアリングの公聴会プロセスに入る。公聴会を経て、正式に下院で承認後、上院に送付される。上院でも可決されると、夏ごろに成立する見通しだ。

 

 Arabella Advisorsのレポートによると、温暖化対策を迅速に進めるため、石炭事業などの化石燃料関連事業への投資資金を減らすDivestment運動が国際的に展開されており、昨年末時点で、総額5兆㌦(約575兆円)の資金が、化石燃料投資から引き揚げられたとしている。

 

 アイルランドはOECD諸国の中でも、8番目に一人当たりの温室効果ガス排出量が多い国にランクされている。また欧州連合(EU)加盟国の中でも、現在の2020年の削減目標の達成が遅れている国の一つとなっている。

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