HOME11.CSR |トルコ第二の大手行、ガランティ銀行。石炭火力発電への投融資の推進役にもかかわらず、英CDPから気候変動対策のリーダー企業である「Global Climate A List」に選定。環境NGOは猛反発(RIEF) |

トルコ第二の大手行、ガランティ銀行。石炭火力発電への投融資の推進役にもかかわらず、英CDPから気候変動対策のリーダー企業である「Global Climate A List」に選定。環境NGOは猛反発(RIEF)

2017-02-01 18:42:44

Garantiキャプチャ

 

 トルコで二番目に大きい銀行、ガランティ(Garanti)銀行が環境NGOの標的になっている。同行は国内で長期にわたり石炭火力発電事業への資金供給を続けてきたにもかかわらず、英非営利団体CDPの気候変動対策のリーダー企業を評価する「Global Cimate A ist」に選定されたからだ。CDPの選定自体への疑問も投げかけられている。

 

 
   ガランティ銀行は、これまで10年以上にわたって石炭火力発電への投融資を継続してきた。同行がファイナンスした石炭火力発電の総容量は6GWに上っている。日本で最大の火力発電は電源開発の橘湾火力発電の1.0GWとされるから、そのほぼ6基分に相当する。ガランティ銀は特に国内の6つの大規模火力発電所計画で資金面での中心的な役割を果たしてきたほか、国営石炭火力4基の民営化事業にもかかわってきた。

 

 同行をはじめ、トルコの金融界は、国内経済の成長を受けたエネルギー需要の拡大から、石炭火力発電所計画へのファイナンスを強化してきた。現在も約80基の新規火力発電所が建設途上にあるという。しかし、石炭火力増設は温室効果ガス排出量を増大させ、パリ協定の流れに反する。このため、同国内外の環境NGOや国内の住民団体などから強い抗議の声があがっている。

 

  特にガランティ銀は、昨年5月にはイズミールの火力発電所事業に資金供給を表明したことで、大規模な抗議行動も受けていた。ところが、企業の温暖化対策を調査し、公表する活動を展開している英国のCDPが、年初に発表した2016年のレポートでは、同行は温暖化対策のリーダー格の企業にしか認められない「Global Climate A List 2016」の金融部門の代表企業として選定された。

 

 同リストに選ばれたグローバルな金融機関は31社。規模の大きさではなく、温暖化対策とその情報開示のレベルを評価する形だ。日本からは、損害保険ジャパン日本興亜、第一生命保険、大東建託の3社がが選ばれているが、メガバンクなどは選ばれていない。他では、英国のHSBC、ロイズバンク、米国のゴールドマンサックス、BNY Melonなどの名がある。

 

 その中で、ガランティ銀は唯一のトルコ銀行として選ばれたわけだ。選ばれた企業はインデックス会社のSTOXXが組成する STOXX Global Climate Change Leaders Indexの構成銘柄として組み込まれるので、投資家にとっても重要な評価となっている。

 

 こうした展開に、環境NGOなどからは、CDPの選定基準に対する不満の声があがっている。ただ、CDPは質問状を企業に送付し、その回答に基づけてスコアリングをするというシステムをとることから、ガランティ銀の回答が“巧み”だったのでは、との指摘もある。



 環境NGOの「Climate Action Network Europe」のトルコ担当気候・エネルギー政策のコーディネーターであるElif Gündüzyeli氏は「結果的に、ガランティは自らの投資判断に気候変動への影響を考慮しているかのように、預金者や取引先を思わせることに成功した。社内でカーボン価格制度を導入したりしていることを強調、また顧客には植樹やオフィスビルのCO2削減をアピールしながら、気候変動を悪化させ、人々の生活にも影響を与えている」と批判している。

 


 同じく環境NGOの「350.org」のトルコ担当キャンペーナーのCansın Leylim Ilgaz氏は「十年以上にもわたって、トルコの人々は、健康を害し、生活環境を破壊する石炭火力の建設に反対し続けてきた。ガランティのような銀行は、われわれから預かった預金を、自然破壊につながる農業プロジェクトや気候変動を加速する環境破壊のプロジェクトに融資している」と強く反発している。

 

 
 環境NGOのBankTrackは、ガランティのCDPに対する回答には、石炭火力への言及が一切ない点を指摘。「同行は他の欧州銀行とは異なり、石炭火力へのファイナンスを削減するための政策は一つもとっていない。こうしたことをみれば、CDPが同行を『グローバルリーダー企業』と評価するのは、馬鹿げている」と、CDPの評価に疑問を向けている。

 

 CDPは、この問題について、現時点では公式のコメントを発表していない。アンケート調査を土台とするCDPの方法論の限界を示した一例との見方も出来る。自主的な情報開示と、自主的な評価という「性善説に基づくESG評価の仕組み」が限界だとすれば、次は義務的開示の採用しかないことになる。

 

http://www.banktrack.org/show/article/garanti_turkey_s_top_climate_killer_bank_praised_as_climate_champion