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国連環境計画(UNEP)。金融機関による「ポジティブインパクトファイナンス原則(PPIF)」を公表。SDGs達成に向けて年間5兆~7兆㌦のファイナンスギャップを埋めることを目指す(RIEF)

2017-02-07 20:48:15

PIFキャプチャ

 

  国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向け、金融機関や投資家が、積極的な投融資を行う「ポジティブインパクトファイナンス原則(Principles for Positive Impact Finance:PPIF)」が、世界の19の金融機関等の協力で発足した。サステナビリティの視点に基づいてSDGs実現のファイナンスギャップを埋めることを目指す。

 

 SDGsは205年9月に、国連総会で公式に採択された。温暖化対策だけでなく、貧困、飢餓、健康、教育、貧困、エネルギー、格差是正など17の分野別目標と169項目の詳細な達成基準からなる。それまでのミレニアム開発目標(MDGs)を継承・発展させたもので、MDGsが途上国を主に対象としたのに対して、SDGsは格差拡大の進む先進国も対象として2030年の目標達成を掲げている。

 

 SDGsの目標達成には2030年までに、インフラ投資、クリーンエネルギー開発、公衆衛生、農業などの分野で、世界全体で5兆~7兆㌦(575兆~805兆円)の資金が毎年必要とされる。このため国連の環境金融イニシアティブ(Finance Initiative)は、新たなファイナンスの流れを築く必要があるとして、15年に「Positive Impactマニュフェスト」を公表した。今回の原則は、このマニュフェストに沿って、ポジティブインパクトファイナンス(PIF)のガイドラインとしてまとめられた。

 

UNEPFI2キャプチャ

 

 PIF原則は「定義」、「枠組み」、「透明性」、「評価」の4つの原則からなる。それらの原則は、すべての金融機関と金融商品・サービスに適用される。金融機関と金融商品・サービスは、社会、環境、経済の各分野の持続可能性を考慮する際や、プラスとマイナスの両面の影響を踏まえる際に、この原則を包括的なアプローチとすることが求められる。

 

 ただ、実際には、これまで、サステナビリティに関する各種原則が打ち出されてきている。そのため、新たな原則は、そうした既存のフレームワークのうえ、あるいはそれらを補完する形で位置づけられる。既存の原則としては、グリーンボンド原則(GBP)責任投資原則(PRI)、赤道原則(Equatore Principles)などを明記している。

 

 原則の1つ目の「定義」では、「PIFは、経済、社会、環境の3つの分野のどれかに、ポジティブなインパクトを持つビジネスに対して資金を供給すること」としている。対象となる金融手段は、ローン、ボンド、株、メザニン、ノート(証書)、クレジットリンク・ノートなどを列記している。

 

 原則の2つ目の「枠組み(フレームワーク)」では、PIFの促進のため金融機関等は、投融資の対象となるプログラムや企業、活動のポジティブな影響を評価し、モニターするための適切なプロセスや方法論、道具が必要、としている。これらを包括したフレームワーク作りを求める形だ。枠組みの適切性を確保するため、人員の配置、外部の認証、セカンド・オピニオンなどによる確認も、金融機関等に求めている。

 

UNEPFIキャプチャ

 

 3つ目は「透明性」。PIFを提供する金融機関も関連企業も、対象となるPIFの活動やプロジェクト、プログラムの効果・影響についての透明性を持った情報開示をすることを求めている。

 

 最後の4つ目の「評価(アセスメント)」は、金融機関等によるPIFの評価について、実際に達成された業績に基づいて実施すべきとしている。評価のクライテリアについては、①ポジティブインパクトの多様度②影響度③投入資金比での影響の度合い④官民資金のレバレッジ比率⑤追加性(Additionality)のレベル、などをあげている。

 

 PPIFの発足に賛同した19の金融機関の総資産額は6兆6000億㌦に達する。フランスの財務大臣のMichel Sapin氏は、「新たな原則は、金融セクターから示されたタイムリーなイニシアティブだ。金融機関は、現在の取り組みをさらに超えて、持続可能な発展を促進することに貢献する意欲を示してくれた」と歓迎の声明を出している。

 

 国連環境計画(UNEP)金融イニシアティブ代表のEric Usher氏は「貧困に終止符を打ち、気候変動と闘い、環境を守るためのSDGsの目標達成のために、年間5兆~7兆ドルの資金が2030年までに必要になる。PIFはこうした中で数兆㌦の資金をSDGsの分野に投じる『ゲーム・チェンジャー』の役割を果たすだろう」と期待を示している。

 

 PIF作成のワーキンググループを構成した19の金融機関等は以下の通り。日本の金融機関は入っていない。

 

 Australian Ethical、 Banco Itaú、 BNP Paribas、 BMCE Bank of Africa、 Caisse des Dépôts Group、 Desjardins Group、 First Rand、 Hermes Investment Management、 ING、 Mirova、 NedBank、 Pax World、 Piraeus Bank、 SEB、 Société Générale、 Standard Bank、 Triodos Bank、 Westpac、 YES Bank.

http://www.unep.org/newscentre/Default.aspx?DocumentID=27092&ArticleID=36343