HOME10.電力・エネルギー |「スー族のトランプとの戦い、司法の場に」。米国のダコタ・アクセス・パイプライン計画で、先住民のスー族が、大統領令に基づく建設承認の一時停止を裁判所に要請。認められないと本訴訟へ(RIEF) |

「スー族のトランプとの戦い、司法の場に」。米国のダコタ・アクセス・パイプライン計画で、先住民のスー族が、大統領令に基づく建設承認の一時停止を裁判所に要請。認められないと本訴訟へ(RIEF)

2017-02-13 09:16:00

dakotaキャプチャ

 

 トランプ大統領が就任直後に、大統領令で建設推進を示した「ダコタ・アクセス・パイプライン」計画に、反対する先住民族のシャイエン・リバー・スー族が、工事差し止め請求を裁判所に出した。認められない場合、本訴訟に訴える。イスラム圏諸国からの入国規制の大統領令に続き、国内の開発促進の大統領令も司法の裁きの対象になる可能性が出てきた。

 

 同事業の総事業費は37億㌦。このうち25億㌦をシティを主幹事とする銀行団からの融資でまかなう。関与する金融機関の数は38とされ、その中には日本の3メガバンクとSMBC日興証券が含まれる。

 

 同パイプライン計画は、ノースダコタ州、サウスダコタ州、イリノイ州を結ぶ全長1886kmの原油パイプライン。ノースダコタ州の石油を運ぶ事業で、すでに9割以上が完成している。ただ計画ではパイプランがミズリー川を堰き止めて作った人造湖のオヘア湖の下を潜り抜けることになっている。

 

 オヘア湖の周辺は先住民のスタンディング・ロック・スー族とシャイエン・リバー・スー族らの居留地で、同湖は宗教上の対象にも擬せられている。このため、先住民たちは、「水資源が汚染される」「伝統文化や慣習を無視している」と抗議を続けてきた。

 

 dakota2キャプチャ

 

 米国土の「本来の所有者」である先住民の主張に、全米の環境保護団体なども反対の運動を展開。これらの動きを受けて、昨年末、工事予定地を所管する米陸軍工兵司令部は、オバマ前政権の要請を踏まえて、いったんは代替ルートへの変更を指示していた。http://rief-jp.org/ct6/66185

 

 しかし、トランプ政権に代わって一変した。オバマ前政権の政策見直しの一環として、カナダから米テキサス州に原油を運ぶ「キーストンXL」計画とともに、ダコタ・アクセスにもゴーサインの大統領令が発せられた。許認可権を持つ陸軍工兵隊は、先週8日、建設会社のダコタ・アクセスLLC社に対して、湖を含む周辺の国有地の地役権を認めた。

 

 これに対して、二つの先住民族の一つであるシェイエン・リバー・スー族は、翌9日に裁判所に対して、工事の一時差し止め請求を求める手続きをした。また、陸軍工兵隊の許可は、先住民族が神聖とする場所での工事建設を認めるもので、先住民族の宗教への自由な活動を阻害するとして、連邦宗教自由回復法(Religious Freedom Restoration Act)に基づく訴訟法の改正を求めている。

 

 スー族は「同地の地役権を与え、建設を積極的に促進することは、先住民とそのメンバーが保有する憲法上の権利を阻害する。その結果、神聖な土地に直ちに、取り返しのつかない改変を与えてしまう」とトランプ政権の姿勢を批判している。

 

 建設会社のダコタ・アクセス社は、国有地での地役権を得たことで、「われわれはいつでも掘削工事に取り掛かるつもりだ」と、トランプ政権の承認を受けて、強硬突破の方針を示している。同社によると、パイプラインの敷設は60日ほどで完了するという。またパイプラインが完全につながり、石油が運ばれるまでに80日程度で終了するとしている。

 

 融資金融機関に向けて反対運動を展開している環境NGOの グリーンピースや、350.org Japanによると、日本の金融機関は総融資額の1位に、みずほ銀行(5億9000万㌦、約661億円)、2位に三菱東京UFJ銀行(5億4800万㌦、約614億円)が名を連ね、融資団全体でも、日本勢は大きな比重を占めている。http://rief-jp.org/ct6/66109

 

 同事業への融資は結果的に、トランプ政権に、日本からの米国への貢献とみなされるのか、あるいは、先住民や環境団体などから、日本の対米追随の“おべっかい事例”と揶揄されるか。

 

https://daplpipelinefacts.com/