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アジア・太平洋州のインフラ需要 2030年までの15年間で総額26兆㌦。年間1兆7000億㌦。アジア開発銀が推計。民間投資額の増額がカギ(RIEF)

2017-02-28 22:08:25

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 アジア開発銀行(ADB)は、日本を除くアジア・太平洋地域でのインフラ需要が2016~30年の15年間で総額26兆㌦(約3000兆円)、年平均1兆7000億㌦に上るとする報告をまとめた。気候変動関連投資を含め、インフラ投資は引き続き高水準で続くとしている。

 

 中尾武彦ADB総裁は「アジア・太平洋地域のインフラ需要は現在の供給を大きく上回る。生活水準を高め、経済成長を促し、気候変動に対するグローバルな挑戦に応える形になる」と指摘している。

 

 報告書は「アジアのインフラ需要への対応」。中国など東アジアや東南アジア、南アジアを含む45カ国・地域を対象に、現在の経済成長を維持するのに必要な 発電所、道路、通信、上下水道などのインフラ投資の規模を試算した。温暖化対策を伴わない場合は22兆6000億㌦で、全体で3兆4000億㌦が温暖化対策による追加分となる。

 

 分野別の投資額は、総投資額全体の半分強の14兆7000億㌦が電力投資に振り向けられる。次いで、8兆4000億㌦が道路などの輸送部門。通信網の整備に2兆3000億㌦、上下水道の整備に8000億㌦などとなっている。

 

 ADBの前回予測(09年)では、10~20年のインフラ需要は総額で8兆㌦、年7500億㌦と推計していた。期間は異なるが、年間平均では倍増することになる。気候変動対策の投資を新たに盛り込んだことの影響が大きいが、加えて同地域の経済成長が続き、インフラ需要が一段と高まっている、と指摘している。

 

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 経済成長にインフラ整備が追い付かない「インフラ・ギャップ」は拡大している。アジア・太平洋地域全体では約4億人が電力不足の状態にあり、3億人が安全な飲料水にアクセスできず、1億5000万人が下水道なしの状態という。 また、地域内の多くの国が、各国市場をつなぐ港湾、鉄道、道路等の域内輸送網の整備遅れとなっている。

 

 地域別ではインフラ需要の61%を東アジアが占める。国内総生産(GDP)に占めるインフラ需要比率は、 フィジーなどの太平洋地域が9.1%と最も高い。温暖化による自然災害の影響を受けるバヌアツやツバルなどで道路や護岸などの整備が必要なためだ。次いで、南アジアの8.8%、中央アジア7.8%、東南アジア5.2%などとなっている。

 

 人口で地域の96%を占める主要25カ国で見ると、現状のインフラ投資額の推計は年8810億㌦。需要の半分ほどに留まる。16~20年の5年間のインフラ需要に対する不足額はGDP予想値の2.4%に相当。中国を除く24カ国ではGDPの5%超の投資が足りない状況だ。

 

 膨大なインフラ需要の一方で、需要に応える投資資金は限定的だ。2015年にADBなどの国際公的金融機関による支援額がインフラ投資全体に占めた割合は約2.5%。内訳は、ADBが100億㌦、世界銀行が66億㌦、国際金融公社(IFC)が32億㌦。16年に稼働した中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の初年度の融資額は17億㌦。

 

 これらの国際公的金融機関による投融資だけでは、旺盛なアジアのインフラ需要に応えることは難しい。中尾ADB総裁は「民間セクターがこのインフラギャップを埋め合わせる重要な役割を握っている。ADBは、パブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP)として民間金融機関が融資可能な事業を展開できるよう投資政策を推進していく」と述べている。

 

 中国のインフラ投資ギャップは、GDPの1.2%分に相当するという。中国を除く24カ国でみると、インフラギャップはGDPの5%に上昇する。しかしADBは、財政面などの公的金融改革によって、そのうちの2%ポイントに相当する投資不足分の約40%を賄えると提言。残りの3%ポイントの60%分は民間金融機関によってカバーできるとしている。そのためには、民間投資額を現在の年約630億㌦から16~20年は年2500億㌦へと4倍に増やす必要あるとしている。

https://www.adb.org/news/asia-infrastructure-needs-exceed-17-trillion-year-double-previous-estimates