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カナダ政府 海洋資源保護と持続可能な漁業を両立するための「ブルーボンド」開発でモデル事業。インド洋のセーシェル諸島で実施へ(RIEF)

2017-03-12 22:11:13

Seshelキャプチャ

 

 カナダ政府が官民資金を集めて設立したブレンデッドファイナンス機関「Convergence」は、持続可能な漁業資源開発を支援する「ブルーボンド」の開発展開に乗り出した。インド洋のセーシェル諸島でセーシェル共和国が抱える債務を、ボンドでスワップして持続可能な漁業を支援する考えだ。

 

 Convergenceはブルーボンドのモデルを開発するため、自然保護団体の Nature Conservancy(NC)に対して、開発資金を供給した。ブルーボンドは、再生可能エネルギーなどのグリーンプロジェクトに資金供給するグリーンボンドと似ているが、資金使途を漁業関連事業に絞り、漁業資源の維持と漁業を両立させる持続可能な漁業を普及することを目的とする。

 

 すでに、大手金融機関でもクレディスイスが海洋関連投資のガイドラインを自ら作成したほか、英国でもチャールズ皇太子が運営するInternational Sustainable Unit(ISU)が提案、欧州連合(EU)も、持続可能な漁業を育成するためのブルーボンド開発に取り組んでいる。http://rief-jp.org/ct12/58115

 

 カナダ政府の支援を受けるNCは、自らの投資部門であるNatureVestが、セーシェル共和国が金融機関から受けている借入債務を、ブルーボンドの調達資金で肩代わりし、新規資金でインド洋での漁業資源を維持しながら漁業を展開する方法に改善することを目指す。

 

 債務と環境保護活動をスワップする「債務環境スワップ」は、1987年にボリビアの熱帯林保護のために活用された経緯がある。先進国やNGOなどが途上国が抱える累積債務を肩代わりし、特定地域での自然保護を約束させる仕組みだった。スワップのために供給する資金は先進国の主に公的資金が使われた。

 

 これに対し、ブルーボンドの活用は、ボンドの発行で機関投資家の市場資金を調達し、かつ、資金使途を持続可能な漁業活動とすることで、安定的な投資リターンも見込めることになる。

 

 現在の計画では、NCの投資部門であるNatureVestが、セーシェル共和国が抱える累積債務2020万㌦分を、民間の債権金融機関から買い取るためのトラストを設立する。同時にセーシェル側に対して、海洋保全と気候変動の適応策を含む持続可能漁業を高度化するために新たに融資する仕組みとなる。

 

 セーシェルは、世界に知られた観光スポットであると同時に、インド洋上にあることからマグロ、エビなどの豊富な漁業資源の輸出が盛ん。マグロ加工ではアフリカ最大の拠点となっている。同国のマグロビジネスはタイ最大の漁業食料企業のThai Union Group Pclが軸で展開している。その一方で、乱獲による漁獲量の減少の懸念も生じている。地球温暖化の進展で、同国の海岸は19世紀以来、19cmの海面上昇が起きているという。

 

 こうしたことから、同国にはすでに、各国の公的援助やレオナルド・デカプリオ財団などの民間非営利資金等をベースにした海洋保全と気候変動の適応のための基金「Seychelles Conservation and Climate Adaptation Trust」がある。 NCは、これら既存の仕組みとの協調も進めることになる。またセーシェルで開発した仕組みを今後、他の漁業依存の小島諸国に展開する計画だ。

 

 

 ブルーボンドでの資金調達は、個々のプロジェクトごとの資金調達合に比べ、比較的コスト安で安定的に民間資金を集めることができ、調達額をスケールアップできるメリットが期待される。

https://convergence.finance/press-detail/2Km7eY3dyoymsaKUQWuU2o