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「2016年サステナブルファイナンス大賞」受賞企業インタビュー⑧ 特別賞のクレディアグリコル証券。「日本市場でのグリーン『売出』ボンドの販売」(RIEF)

2017-03-09 16:31:25

CASIB1キャプチャ

 

 仏大手金融グループのクレディ・アグリコル・グループの投資銀行部門であるクレディ・アグリコル・コーポレート・アンド・インベストメント・バンク(CACIB)は2013年に日本の売出市場で自社のグリーンボンド(CACIBグリーンボンド)を発行、その後も定期的に発行している。日本におけるグリーンボンド市場の発展に貢献してきた功績に対して、サステナブルファイナンス大賞の特別賞を贈った。CACIBの子会社で日本でのグリーンボンド発行に注力してきたクレディ・アグリコル証券会社東京支店の担当の方々に聞いた。

 

――CACIBはグローバル市場でもグリーンボンドやサステナブル・ボンドの引受けで主要プライヤーになっていますが、日本の売出市場でも実は、先駆的にグリーンボンドを発行されてきたのですね(注)。

 

長廣牧人・副支店長 兼 法人営業本部長:私たちが日本の売出債市場に正式に参入し、引受け・販売業務を始めたのは2011年です。その後、2013年1月に、CACIBを発行体とするCACIBグリーンボンドを、売出債市場で初めて引受け・販売いたしました。個人投資家を中心とした購入層や販売をされる証券会社の需要と、弊社による戦略的な発行ニーズがマッチする中、日本における発行額は拡大して参りました。お取扱い頂く証券会社の裾野もより広くなり、市場の規模も更に拡大してきている、と感じております。

 

――最初の日本市場向けのCACIBグリーンボンドについて、詳しく教えてください。

 

長廣:2013年1月に発行したものは、ブラジル・レアル建で、発行規模は約3億円相当でした。同年9月に、日本の大手金融グループによる円貨建ての証券仲介案件として取扱い頂き、それを一つのきっかけに、発行規模は急速に膨らんで参りました。

 

われわれのグリーンボンドは、CACIBが管理するグリーン・ローン・ポートフォリオに運用資金を充当することを想定した仕組みです。同ポートフォリオは、再生可能エネルギーや環境不動産、廃棄物管理、環境負荷の少ない輸送等の、分散されたセクターに資金供給することを想定しており、かつ高いESG基準での評価を満たしています。

 

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――これまでに日本市場で発行したCACIBグリーンボンドの総額、及びクレディ・アグリコル証券会社東京支店が引受け・販売した世界銀行などの国際機関(SSA)発行のサステナブル・ボンドはどれくらいの規模になりますか。

 

長廣:2013年以降のCACIBグリーンボンドは、売出債で50数件、私募債等の相対の取引を含めますと60件以上になります。SSAによるサステナブル・ボンドの売出債引受け実績は35件。合計の発行額は1700億円相当を超える額になります。グローバルには、サステナブル・ボンド市場はここ数年で急拡大していますが、日本市場においては、個人投資家層をターゲットにした本市場は元々大きな規模で存在し、今後も安定的に増加方向で推移していくものと考えております。

 

――CACIBのグリーンボンドとSSAによるサステナブル・ボンドとで、顧客の反応は異なりますか。

 

長廣: 直接個人投資家層に販売してはおりませんので、取引相手である証券会社の方々から頂いたフィードバックからの類推でしかありませんが、CACIBのグリーンボンドと、様々な国際機関によるサステナブル・ボンドとの間に、CSRという観点からの大きな差異は特に感じてはおりません。

 

ただし、国際機関の場合は、Woman Bond、Water Bond、Vaccine Bond等、それぞれ特有のテーマ債を出すケースがありますので、そういった個別のテーマ特有の需要がある場合には、顧客反応の違いがあると認識しております。

 

――グリーンボンドで調達した資金は、CACIBのグリーン・ローン・ポートフォリオに資金は組み入れられるとのことですが、それらの資金使途はどうなっていますか。

 

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岩崎美穂シンジケート部:現在のポートフォリオでは、米国の太陽光発電などの再生可能エネルギーに36%。それ以外では環境保全型ビルなどの環境保全型不動産への融資が38%、廃棄物・水資源管理と、公共大量輸送にそれぞれ13%などとなっています。廃棄物・水資源管理は欧州の案件が多いです。ポートフォリオは基本的に大きな変更はありません。

 

 グリーン・ローン・ポートフォリオは、基本的に年一回監査が入り、毎年情報開示をしています。再生可能エネルギーの36%のうち、太陽光発電が19%分、風力発電が16%分、残りが水力発電1%となっています。環境不動産には、環境保全型ビルのほかに、グリーンREITも投資対象にしています。

 

――グリーンボンドを購入する保険会社や年金等の機関投資家からの反応はいかがでしょうか?

 

長廣:元々本邦機関投資家の需要は強いですが、特に最近、CSR戦略の強化から、本市場への需要は強まっているように感じております。弊社は、機関投資家市場でも、国際機関発行の様々なサステナブル・ボンドを、公募・私募の形態で引受け・販売させて頂いており、最近では、米州開発銀行(IADB)によるEYE(教育・若年層支援・雇用支援)ボンドや、アフリカ開発銀行(AFDB)による教育支援債、チリ国立銀行によるマイクロファイナンス債などを引受け・販売させて頂きました。

 

――日本の金融・市場全体では、引き続き超低金利が続いており、市場環境としてはよくありません。

 

長廣:確かに超低金利の中、金融市場環境は必ずしも良いとは言えません。しかし、個人投資家の市場では依前、サステナブル・ボンドへの需要は強いのではないでしょうか。直接販売される証券会社の営業努力もあり、個人投資家の裾野も広がっているのではないかと思います。また、CACIBグリーンボンドをお取扱い頂く証券会社の方々の数も、お陰様で増えて参りました。

 

石川隆道・ホールセール営業部長:公募債の場合、色々な媒体で紹介されますので、多様な顧客のニーズが出て来ます。また地方の大手証券の支店でCACIBグリーンボンドを売り出すと、その地方の地場証券会社から「クレディ・アグリコルのグリーンボンドをうちでも売りたい」という要望が出てくるといった形の相乗効果が広がっています。

 

長廣:機関投資家市場では、サステナブル・ボンドの公募債市場は、2012年以降、加速度的に拡大しております。その過程で14年の1月にグリーンボンド原則(GBP)が発表された後、更に発行が増えて、昨年はグローバル市場での発行額は90億ドルに達しました。サステナブル・ボンドに投資される日本の機関投資家もだいぶ増えてきました。

 

――グリーンボンドを含むサステナブル・ボンド市場はグローバルに伸びていますが、世界全体の債券市場に占める割合はまだとても低い。1%にもいかない。今後の市場の伸びをどうみていますか。

 

青木博史・資本市場部長:まず海外は相変わらずというか、むしろ加速度的に増えていく可能性が高いと思います。特にこれまではなかった国債の発行が、先のフランス政府によるグリーンボンド国債発行などで増えて来そうです。われわれも今回のフランスのグリーンボンド国債の主幹事をしたほか、単独のアドバイザー、ロードショーのアレンジャーなどを務めました。

 

  日本でもいろんな意味でサステナブル・ボンド発行の余地が広がっていると思います。投資家の側でも、受け皿となる投資家が増えているのも事実です。ユーロSIFの調べによると、ESGの要因を投資判断に組み込む投資家が全体の6割を超えるとのことです。欧州の投資家を中心にかなりの比率で環境意識が高まっていくと思われます。日本も、今後は、機関投資家を中心に勢いづく可能性は高くなっていくと思います。

 

――クレディ・アグリコルで、日本のグリーン資産を資金使途にしたグリーンボンドを、将来、出すという考えはありませんか。

 

長廣:日本のグリーン資産に特化したグリーンボンドについてのご質問やご要望は頂いておりますが、具体的な話は特に進んでおりません。

                                       (聞き手は藤井良広)

 

(注)「売出」とは、新規発行有価証券を販売・勧誘する公募に対して、既発行の有価証券の販売・勧誘を指す。