ノルウェーの資産運用機関KLP(Kommunal Landspensjonskasse)は、米国トランプ政権がゴーサインを出したノースダコタ州の石油パイプライン計画「Dakota Access Pipeline(DAPL)」の事業を推進する4企業への投資資金5億7800万ノルウェークローネ(約77億4500万円)を引き揚げると宣言した。先住民に対する人権侵害が理由。DAPL計画で運用機関がDivestmentを実施するのは初めて。
DAPL事業を巡っては、これまでも、同事業に融資しているシティバンクや三菱東京UFJ銀行などの主要金融機関に対して、 CalPERSや Boston Common Asset Managementなど約130の資産保有機関や運用機関が、パイプライン建設の影響を受ける先住民の主張を受けて代替案採用の可能性を質問している。http://rief-jp.org/ct6/67938
またスウェーデンのノルディア銀行の責任投資チームも、DAPLに関係する3企業を投資対象から除外する勧告を出している。実際に関連企業から資金引き揚げを決定したのはKLPが最初。資金運用機関がESG(環境、社会、ガバナンス)要因を投資判断に明確に組み込んだケースといえる。
KLPは昨年末に担当者が現地を視察してパイプライン建設に反対しているスタンディングロック・スー族などの先住民から事情を聴取した。今年3月3日には、国連の先住民の人権に関する特別報告官Victoria Tauli-Corpuz氏が「DAPL計画は適切な社会、文化、環境面のアセスメントがなく、先住民との十分な協議や参加も得られていない」と警告した。こうしたことなどを受けて、決断した。
Victoria Tauli-Corpuz氏の報告は今年9月に正式に公表される予定。KLPは、投資引き揚げ対象とした4企業は「先住民に対して重大あるいは意図的な人権侵害を続けるという受け入れがたいリスクを展開した」と指摘している。