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米最大の公的年金カルパース(CalPERS)気候変動対策で化石燃料企業からの投資引き揚げのDivestment行動はとらず。株主としてEngagementに重点。投資委員会が決定(RIEF)

2017-04-19 22:27:09

CalPERSキャプチャ

 

 全米最大の公的年金であるCalPERS(カリフォルニア州退職年金基金)は、先ごろ投資委員会を開き、気候変動対策として化石燃料企業等への投資を引き揚げるDivestmentを投資政策にするかどうかについて投票した結果、否決した。Divestmentよりも株主として投資先企業の行動改革を求めるEngagementを優先した株主行動をとることを確認した。

 

 CalPERSは運用資産3100億㌦を抱える。その投資判断は投資先企業へ大きな影響力を及ぼす。このため環境団体などが、気候変動に影響を与えている石炭等の化石燃料関連企業への株・債券投資を引き揚げるよう要請してきた。

 

 こうした要請を受けたCalPERSの投資委員会は、年間の投資計画決定に際して、Divestmentを投資政策に含めるかを判断するため、環境団体なども含めたヒアリングを実施。その後、無記名投票を行った。その結果、「Divestmentは投資パフォーマンスに有害といえる。社会的、政治的目標を達成する戦略としても効果が薄い」として否決した。

 

 CalPERSは否決理由として、カリフォルニア州憲法で、公的年金の資金運用に際しては金融リスクを避け、年金受給者の受益の向上を最大限に高めなければならない、と定められていることを指摘。投資先企業から資金を引き揚げるより、株主として投資先に社会的ゴールの達成を目指すよう働きかけるほうが望ましい、と説明している。

 

 ただ、CalPERSのスポークスウーマンは、Divestmentをまったく否定しているわけではない、と説明。将来は株保有の形態に応じて投資の引き揚げについても検討するだろう、と述べた。

 

 Divestment運動を世界的に展開している環境NGOなどは、今回のCalPERS投資委員会の決定について、失望を隠さない。同時に、機関投資家の株主行動として、Divestment とEngagementという二つの行動のあり方をめぐる議論が広がりそうだ。

 

 特にCalPERSが、Divestmentが年金運用の金融リスクを高める可能性に言及した点については、意見が分かれるだろう。CalPERS以外の他の年金基金等も、Divestment よりEngagementを株主行動として選択するところが多い。資金規模の大きい年金などの場合、Divestmentをした場合、引き揚げた資金の再投資先の金融リスク、投資リターンの確保などにも応えなければならない。

 

 CalPERSが実施したヒアリングにも参加したカリフォルニア州民主党の環境グループの議長であるRL Miller氏は「Divestmentは確かに強引なステップではある。しかし、CalPERSが実施してきたEngagement行動も特に成果を上げているわけではない」と指摘している。

 

 カリフォルニア州では、州法で年金等に対してDivestmentのルール化を定めようという動きもある。CalPERSは、こうした法規制ができたならば、それに従う、と言明している。

https://www.eenews.net/climatewire/2017/04/18/stories/1060053201

https://www.calpers.ca.gov/docs/board-agendas/201704/invest/item05a-02.pdf