金融安定理事会(FSB)の気候情報開示部会(TCFD)報告書を支持する企業・機関トップ100人以上が共同声明。日本からは国際興業と住友化学。情報開示の先行実施目指す(RIEF)
2017-06-30 01:44:08
金融安定理事会(FSB)が気候関連財務情報開示作業部会(TCFD)の最終報告を公表したことに対して、100社を超える各国企業・機関のトップ経営者らが、同報告を支持する共同声明を発表した。日本からは住友化学、国際興業の2社のCEOが名を連ねた。
賛同企業の資本総額は3兆3000億㌦、運用資産額は24兆㌦に上る。これらの企業の経営者らがビジネスリーダーとして、TCFD報告書を踏まえて、自社の気候変動リスク等の開示を先行的に実施することで、市場ベースでの情報開示の促進が期待される。
TCFDの報告は、気候変動リスクとオポチュニティを抱える企業に対して、その重要性(Materiality)の評価を財務情報として開示することを求める内容だ。http://rief-jp.org/book/70932
来月7-8の両日、ドイツ・ハンブルグで開くG20首脳会議でFSBが報告する予定。ただ、当面は自発的開示となることから、自分の会社にとっての気候リスク・オポチュニティは何か、そのウエイトの見極めが重要になってくる。各国の国内会計制度との整合性も課題だ。
FSBの発表と同時に、TCFDの報告内容を支持する100を超える企業のCEOらによる共同声明と署名リストが公表された。声明では、「気候変動は多くの産業セクターを超えて影響を及ぼしている。われわれはビジネスリーダーとして、気候リスクとオポチュニティに関する透明性を確保する役割を担っている」と強調、自ら情報開示に取り組むだけでなく、他の企業や経営者にも参加を呼び掛ける、としている。
すでに気候リスク対策を積極的に展開している企業にとっては、TCFDの報告に沿った情報開示を進めることで、企業価値への適切な対応をしていることを市場に示すことができる。そうではない企業に比べて投資家の信頼を得る可能性が開けたことにもなる。気候情報開示はビジネス機会なのだ。
一方、年金や保険会社などの機関投資家にとっては、企業がTCFDの提示する手法を共通してとることで、企業間・産業間比較がしやすくなるという利点がある。気候リスク等については、これまでも英NGOのCDPなどが、企業アンケートで各社の温暖化リスクを聞く方法がとられてきた。だが、企業が主体的に開示をしているわけではなく、回答内容にもバラツキがあるなどの課題を抱えている。
共同声明では、「TCFDの勧告は、(これまでよりも)整合的で、比較可能で、信頼できる気候関連情報を開示させる引き金になり、投資決定をより促進する。こうした気候関連情報開示はスムーズな低炭素経済への移行を支え、資本の効率的な配分を推進する」と評価している。
声明に署名した主な企業には、気候情報を評価する側では、保険がAllianz(独)、AXA(仏)、AVIVA(英)、Aegon(オランダ)、Swiss Re(スイス)、銀行がBank of America(米)、HSBC(英)、BNP Paribas(仏)、Australia & NewZealand Banking Group(ANZ)、Barclay(英)、Citigroup(米)、中国工商銀行(中国)、Morgan Stanley(米)、UBS(スイス)など。証券取引所がロンドン、シンガポール、イタリア。年金基金は、CalPERS(米)、CalSTRS(米)、カナダ公的年金など。
自社の気候情報を開示する側の企業では、BHP Billiton(豪)、Dow Chemical Company(米)、DuPont(米)、EDF(仏)、Enel(伊)、Glencore(スイス)、PepsiCo (米)、Royal Dutch Shell(英蘭)、Tata Steel (インド)、 The Virgin Group(英)、Unilever(英蘭)など。
日本から声明に署名した2社のうち、国際興業はクリーンエネルギーや社会インフラ、防災・環境保全などをサポートする「地理空間情報技術」を軸にして「グリーン・コミュニティ」の構築を業務の柱に据えている。
もう一社の住友化学は、地球規模の環境・気候変動問題に対応する「環境・エネルギー」、世界的な食糧・健康問題に対応する「ライフサイエンス」、情報通信インフラの世界的普及を促進する「ICT」の3分野に、経営資源の重点投入を宣言している。