HOME6. 外国金融機関 |グローバル市場のグリーンボンド発行額、今年上半期は前年同期比35.9%増の530億㌦。年間では1200 億~1500億㌦の予想。トランプ政権のパリ協定離脱の影響少なく(RIEF) |

グローバル市場のグリーンボンド発行額、今年上半期は前年同期比35.9%増の530億㌦。年間では1200 億~1500億㌦の予想。トランプ政権のパリ協定離脱の影響少なく(RIEF)

2017-07-10 11:48:11

GB2キャプチャ

 

 今年上半期のグローバル市場でのグリーンボンド発行額は約530億㌦と、前年比35.9%増と高い伸び率を示した。

 

 英非営利団体のClimate Bonds Initiative(CBI)のまとめによると、上半期でもっとも発行規模の多かった月は1月の112億2000万㌦、次いで5月の108億8000万㌦となっている。6月は、CBIの調査では61億8000万㌦、Environmental FinanceのGreen Bonds databaseでは98億㌦と差が生じたが、CBIはより厳格なクライテリアを適用してるためとみられる。

 

 上半期の特徴は、1月にフランス政府が同国初のグリーンボンド国債(OAT)を70億ユーロの発行を公表したことで、市場の流動性が増大した。また6月には、Appleが10億㌦、オランダの電力送電会社のTenneT.が10億ユーロと、それぞれ大型発行に踏み切った。両社とも、継続発行企業で、これらも市場の成熟化を後押ししていると評価されている。

 

 特にフランスのグリーンボンド国債は、国債の定期発行計画に組み込まれており、6月にも16億3200万ユーロ分が発行された。年間発行額は130億ユーロになるとみられる。オランダの年金基金のPGGMは、フランスのグリーンボンド国債が、グリーンボンド市場の「ゲームチャンジャ―役」を果たした、と高く評価している。

 

 グリーンボンドの市場ベースでの国際標準になっているグリーンボンド原則(GBP)は先月開いた第三回年次総会で、フランスに続いて他国でのグリーンボンド国債の発行を歓迎する見解を出しており、下半期の動きが注目されている。

 

 昨年、グリーンボンド市場を牽引した中国企業の上半期の発行額は60億㌦で、前年の87億㌦に比べて31%減と低迷した。中国版グリーンボンドの発行量の頭打ちは、昨年の勢いが急過ぎたという点と、中国当局が現在、国内市場と国際市場の差異を調整していることなどが影響しているとみられる。市場関係者には、引き続き中国のグリーンボンド発行額は安定的に増加していくとみる向きが多い。

 

 グリーンボンド市場の成長にとって、トランプ政権の反温暖化対策の影響が懸念されるが、最近の市場調査では、80%以上の専門家が、今年の市場規模は少なくとも1000億㌦台を突破するとの見方を示している。米国のパリ協定からの離脱の影響がグリーンボンド市場に及ぶと、懸念する向きは16%にとどまっている。

 

 グリーンボンド市場は、今年で初発行から10年という若い市場だ。http://rief-jp.org/ct6/71059?ctid=69。しかし、その成長度は毎年急ピッチで、特に下半期は上半期よりも発行量が増える傾向にある。昨年は年間で810億㌦(CBI調べ)~930億㌦(EF調べ)と、前年より倍増した。今年も1500億㌦(CBI予測)、1200億㌦(EF)などと、高成長が見込まれている。

 

 ただ、日本勢の上半期のグリーンボンド発行額はゼロだった。環境省は3月に同省版のグリーンボンド・ガイドラインを作成したが、市場関係者の間では、同ガイドラインは国際基準のGBP等との関連性が不明で、市場の流動性確保にむしろ弊害になる懸念があるとの見方が広がっている。

 

 「行政の都合」でガイドラインを作成する役所の動きが、日本の市場環境の整備を遅らせる要因になっているとすると、日本のグリーンボンド市場の活性化は「道遠し」の状況にあるのかもしれない。

https://www.climatebonds.net/