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欧州の主要保険会社、石炭関連の投融資引き揚げ不十分。主要5社だけで新規石炭火力向け投融資約400億円分を保有。パリ協定目標達成に懸念。環境NGO指摘(RIEF)

2017-08-07 08:40:55

 

  保険会社による石炭等化石燃料企業向け投融資をウォッチしている欧州の環境NGO「Unfriend Coal(UC)」は、AllianzやGeneraliなどの5大欧州保険会社が新規の石炭火力発電所97GW分に対して少なくとも3億6100万㌦(約400億円)の投融資をしていると指摘した。UCはこれらの石炭火力が稼働すると、パリ協定の遵守を困難にすると警告している。

 

 保険会社は大手投資家として、石炭関連産業向けの投資を選別する側面と、保険引き受けの本業で石炭産業を選別するという両面の影響を及ぼす。ただ、今回のUCの調査では、投資面でのDivestmentへの取り組みは各社によって差があるほか、本業の保険引き受けでは十分な対応をしていないことなどが浮き彫りになった。

 

 UCは保険会社の温暖化対策を促すために設立された国際NGO。RANやシェラクラブ、350.org、Friends of the Earth France、 Greenpeace Switzerlandなどの環境NGOが連携し、保険会社をターゲットにして設立、活動を続けている。今回、Allianz、Generaliのほか、Munich Re、Swiss Re、Zurichの各社が公開した半期決算を分析、指摘した。

 

isuaranceキャプチャ

 

 このうち、Allianz、 Munich Re、Swiss Reの3社は、他の6つの保険会社とともに、石炭関連企業向けの資産を引き揚げる活動を宣言している。ただ、英国のAxaは石炭企業の投資引き受けの停止を実践しているほか、フランスのAXAは石炭産業向け投資をしている企業向けの自らの投資の引き揚げも宣言するなど、徹底しているが、今回の対象保険会社の足並みはバラつきが目立つ。

 

 まず、Zurich と Generaliはともに、世界最大の総合保険会社として知られるが、これまで明確な石炭対策を打ち出していない。またAllianz、 Munich Re、Swiss Re、フランスのSCORの4社は、自らは石炭企業に投資していないが、石炭企業の資金調達の引き受け業務は続けている。その投資クライテリアは緩く、大規模な石炭開発事業者は対象外となるなどの抜け穴があると、UCは指摘している。

 

 Allianzは計画中の石炭関連企業向けの投資額が2億4100万㌦を抱え、もっとも投資額が多い。投資額の対象となる新規石炭火力発電は82.6GWと5社全体の大半を占める。またAllianzは自らの投資ファンドを通じて、第三者向けに大規模な石炭資産を管理しているという。

 

 GeneraliとMunich Reは、ともに主要な石炭開発企業向けの投資を維持している。 Zurichはそれらの企業発行の債券保有額は低いが、Glencore、 Duke Energy、BHP Billitonなどのエネルギー大手の債券を保有している。Swiss Reは石炭開発企業の債券は一切保有しない方針を打ち出しているが、タールサンド会社の債券は1億1000万㌦保有。ただ、それらの産業の保険引き受けは停止しているという。

 

 環境NGOのSunrise Projectのファイナンス・ディレクターのPeter Bosshard氏は「保険会社の石炭関連会社向けの資金支援が続くことは、パリ協定の目標達成を危うくする。気候変動関連の訴訟が相次いでおり、保険会社にとってもこうした石炭関連向け投融資の増加は重要な金融リスクを作り出す」と批判。道義的責任だけでなく、保険会社のビジネス上のリスクも高めている、と指摘している。

 

http://unfriendcoal.com/2017/08/03/climate-and-coal-policies-of-leading-global-insurers-briefing-papers/