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フランスのソブリン調査機関「Beyond Ratings」。ESG要因を信用格付に組み込んだ統合格付手法開発。まずソブリン格付に適用、企業向けにも拡大へ(RIEF)

2017-08-11 21:49:49

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  フランスの調査機関「 Beyond Ratings(BR)」は、環境などのESG要因を国のソブリン信用格付の評価に組み込む新たな格付手法を開発した。 Moody’sなどの既存格付機関は、信用格付とは別にグリーンボンドなどの「グリーンアセスメント」を開発しているが、信用格付の中に非財務要因の評価を組み込む格付手法の開発は初めて。すでに評価情報をフランスの年金基金等に提供し始めた。

 

 BRは2014年に設立された新しい調査会社で、各国の国債等のデフォルトリスク分析等をグローバルな投資家に提供している。今回、責任投資調査会社のGrizzly RI と共同で、160カ国のソブリン信用格付とGDPに影響を及ぼすESG指標の評価手法を開発したという。

 

 BRらは各国の国別リスクの評価に適用するESG指標を約300選別し、データベース化した。指標のうち95は環境分野、115が社会分野、85がガバナンス分野となっている。データアナリストによって、これらのESG指標が各国の信用格付と成長率に及ぼす影響を試算、従来の格付とESG評価を加味した格付とのギャップ分析などを提供する。

 

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 BRは、すでにフランスの公的年金のERAFP(フランス公務員退職年金基金)や企業年金、米英、仏、北欧等の資産運用会社や保険会社等に、各国の国債投資の際の調査情報を提供しており、新規開発した統合格付情報も提供していく。

 

 BRは欧州証券市場機関(ESMA)の認可を得た格付機関ではない。だが、国債のデフォルトリスクを評価する定量データに基づいて各国国債のスコアリングを実施、顧客に提供している。スコアリングには伝統的な信用リスク評価に加えて、エネルギー、気候、自然資源などの評価要素も組み込んでいる。

 

 BRはこうしたESG要因を反映したスコアリング評価を情報として提供するだけではなく、現在、ESMAに格付機関としての認可を申請中という。今回のESG要因を組み込んだ信用格付手法の開発は、フランス政府のGlobal Environmental Fund、国家開発銀行のAgence Française de Developpement (AFD)などの資金支援で進めており、いわばフランスの官民共同プロジェクトでもある。

 

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 BRは現在、85カ国の国別ESG評価を開発しているが、これを10月までに140カ国に拡大する方針。さらに今後1年半の間に、各国の公的機関や第三セクターなどのサブ・ソブリン機関にも統合格付評価を適用し、その後は企業格付に拡大する予定という。


 BRのCEOで共同創設者のRodolphe Bocquet氏は「支援機関の協力によって、今後1年半の間に、我々は本格的な信用格付機関に移行するだろう」と自信を示している。 Bocquet氏は、BR設立の前には、 Société Généraleのエクイティデリバティブのスペシャリストとして活躍してきた。

 

 ESMAの認可を得ると、BRは気候変動リスクを信用格付にシステミックに反映できる唯一の格付機関となる。既存の格付機関のMoody’sや S&P Ratings、それに日本の格付投資情報セター(R&I)などは、グリーンボンドのESG評価を行うグリーン・アセスメントを提供しているが、信用格付とは別建てとなっている。

 

 ESG要因を組み込んだ統合的な信用格付評価が普及すると、グリーンボンドなどの市場取引を加速する期待がある。現在、グリーンボンドの評価については信用格付と第三者評価の二重チェックを受ける形となっている。これが、通常の債券の格付と同様に一度格付を取得すればよくなる。また一般的な債券格付でも、発行体のESG評価が盛り込まれることで、統合的な企業価値を評価できることになり、投資家にとって格付情報の価値が高まる。

http://www.beyond-ratings.com/