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世界初の国営グリーンバンクの英国グリーンインベストメントバンク(GIB)、豪マッコーリー銀行グループに正式売却、23億ポンド(約3200億円)で(RIEF)

2017-08-21 19:52:07

GreenInvestmentBankキャプチャ

 

 英国政府は世界初の国主導のグリーンバンクとして設立したグリーンインベストメントバンク(GIB)を、オーストラリアのマッコーリー銀行グループに売却することが決まった。売却額は23億ポンド(約3200億円)。GIBのマッコリー銀行への売却は今年4 月に固まっていたが、売却額や売却後のGIBの戦略等への疑念から、決定が遅れていた。

 

 すでにGIBのウェブサイトでは、マッコーリー(Macquarie)のロゴとGIBのロゴが両方記載されている。http://greeninvestmentgroup.com/what-we-do/

 

GIB1キャプチャ

 

  GIBは2012年11月に当時の保守・自由民主党連立政権によって、民間資金をグリーン投資に誘導することを目指して設立された。国がグリーン投融資専門の銀行を設立したのは、初めてだった。同行をモデルに米コネチカット州やニューヨーク州でもグリーンバンクが設立されている。

 

 GIBをめぐっては設立時に国費15億ポンドを投じて設立したことから、早期に国費を回収し、民間に移管すべきとの意見が政府内で強かった。このため、キャメロン前政権は、2015年6月にGIBを民営化して、民間資本の増強で活動範囲を拡大すると、民営化方針を宣言。昨年初めに民営化プロセスを始め、昨年7月に政権を継承したメイ首相も民営化方針を受け継いできた。http://rief-jp.org/ct6/59089

 

 政府は早くからマッコーリー銀行を売却先として内交渉をしてきた。だが、競合相手として入札に参加したファンドのSustainable Development Capital(SDCL)が、政府手続きに不備があるとして司法判断を求めたほか、環境NGOなどが政府の売却方針に強く不満を示してきた。ただ、裁判所は今月初めに、SDCLの提訴を却下した。

 

 環境NGOらが懸念を示すのは、マッコーリー銀行が英国営水道会社のThames Waterを1989年に買収したその後の経緯にある。民営化後のThamesは、水道事業の独占的地位を利用して水道料金を値上げし、さらに水道事業以外の内外の収益事業への展開などで、投資家優遇の経営を展開した。その結果、利用者への還元より株主への還元が上回る経営に陥っているとの批判を浴びている。https://www.theguardian.com/commentisfree/2014/jun/15/thames-water-discontent-privatisation

 

 こうしたことから、GIBも同様に、英国のグリーンインフラ推進のレールを逸脱して、「グリーン・ウォッシュ」ビジネスに陥るのではとの懸念が示されていた。

 

 英政府はそうした懸念に配慮して民営化後も、独立評議員5人による経営監視の仕組みと、特別株を保有するGreen Purposes Company(GPC)を設立。民営化後もGIBのミッションを維持する体制が続くことを強調している。マッコーリーも「GIBのブランド力こそが強み」として、GIBの現在のロンドンとエジンバラのオフィスを維持し、100人以上のグリーンエネルギー投資専門家集団をさらに強化する姿勢を強調している。

 

 GIBが投融資に参加した案件は、100件以上におよぶ。世界初の洋上風力発電事業をはじめ、街ぐるみの省エネ事業、バイオマス発電など多様なグリーン事業を推進し、保有資産規模は34億ポンド(4760億円)以上となっている。このうち、民営化後も英政府が引き続き保有する既存投資資産は1億3500万ポンドあり、これらの資産は売却されるまで政府資産としてカウントされる。

 

 ただ、GIBの正式売却に対しては、環境NGOだけでなく、野党の労働党、自由民主党、緑の党などもそろって懸念を表明している。政治基盤の脆弱なメイ政権にとって、既定路線の民営化とはいえ、グリーン投資戦略でつまづくと、EU離脱の政治交渉にも微妙な影響を及ぼしかねない。

 

http://greeninvestmentgroup.com/