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S&Pが、金融安定理事会の気候財務情報開示タスクフォース(TCFD)報告について、「信用格付けの改善に資する」と評価、格付けへの反映を示唆(RIEF)

2017-08-28 13:07:17

S&Pキャプチャ

 

  米格付機関のS&Pは、先に金融安定理事会(FSB)の気候財務情報開示タスクフォース(TCFD)が、企業の気候関連のリスク・機会の情報を財務情報化することを促す報告書をまとめたことを取り上げ、「企業の信用格付評価のプロセス改善に役立つ」と評価した。格付機関がTCFDの視点を信用格付に反映させる動きが広がりそうだ。

 

 S&Pは公開しているResearch noteでTCFDの報告書についての評価を示した。その中で、「企業がTCFDの報告書に沿った情報開示を進めることは、S&P Global Ratingsの格付業務を含めて、金融市場にとって気候関連情報を従来よりもはるかに利用し易くする」と指摘した。

 

 特に、「TCFDの勧告内容が企業の情報開示の基準や、あるいは規制によって幅広い企業に義務付けられることになれば、現行の気候変動リスク等と整合性を著しく欠く現行の情報開示の変更につながる」と、TCFDの開示基準化の促進に強い期待を示した。

 

 またTCFDが、機関投資家などの資産保有機関に対して、保有資産あるいは投資戦略における加重平均的なカーボン排出量を明らかにするよう求めていることを強調。パリ協定が示した世界の気温上昇を2℃未満に抑制する国際目標を達成するために、TCFDがシナリオ分析の導入を求めたことで、一部の企業等に懸念と困惑が生じている点については、「シナリオ分析は想定面で幅広い変化量の余地を残している」と指摘し、シナリオ分析を柔軟にとらえる姿勢を示している。

 

 こうしたTCFD報告の柔軟性は、情報開示に自発的に取り組む企業にとって、取り組み易さを高める、とも指摘している。ただ、同時に、企業の自発的な取り組みだけでは、同業他社の情報比較等には依然、使いづらいことになり、情報開示の不整合性と実態とのギャップは依然、残るとの懸念も示している。

 

 S&PのTCFD評価レポートは、TCFD報告公表後、EUの「High-Level Expert Group on Sustainable Finance (HLEG)」 がまとめた中間報告についても意識している。同報告では格付機関の信用格付に際して、TCFDが示す気候関連情報を加味することを求めている。HLEG はさらに欧州の金融機関の義務的情報開示に、TCFDの気候変動関連情報を盛り込むことを提案している。

 

 S&PグループのESG調査分析会社のTrucostは先に、TCFDの報告に基づく気候変動の財務影響をシナリオ分析できるツールを開発、機関投資家や企業向けに提供し始めている。今回のS&P本体でのTCFD評価は、そうしたツールによる分析を、企業の信用格付けにおいて、考慮する必要性を強調した形でもある。http://rief-jp.org/ct4/72002

 

 https://www.spglobal.com/our-insights/How-The-Recommendations-Of-The-Task-Force-On-Climate-Related-Financial-Disclosures-May-Figure-Into-Our-Ratings.html