米国最大の公的年金のカリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)は、世界のCO2排出量に影響の大きい100の企業をターゲットにして、各国の機関投資家等が「共通エンゲージメント行動」をとる「Global Climate 100 Initiative」を、来月開く国連の責任投資原則(PRI)年次総会で提案する方針を明らかにした。
(映像は、CalPERSが8月14日に開いた投資委員会)
CalPERSは1年半にわたって自らの投資ポートフォリオが抱えるカーボンフットプリントを調査した。その結果、ポートフォリオ全体の排出量の50%は、約80の大企業が寄与していることを突き止めた。また他の大規模機関投資家の場合もほぼ同様に、投資対象全体のCO2排出は特定少数の企業からに集中し、他の投資家と共通の投資先になっていることがわかった。
このことは、投資家として投資先企業に気候変動問題への対応を求めるエンゲージメント活動の対象先が共通化できることを意味する。そこで、CalPERSは、グローバルに共通エンゲージメント先企業を100社選別し、「チームを組んで、共同で働きかける枠組み」の構築を提案することにした。
すでに多くの年金基金のほか、Ceresのような環境NGO、PRIなどからも提案に対する関心が寄せられている。CalPERSの計画では、地域ごと、あるいは国ごとに資産保有機関と資産運用機関がネットワークを形成、CO2排出量の多い企業を共通エンゲージメント戦略の対象に選ぶ。ターゲットとする100社全体への対応等を円滑に進めるため、運営委員会を設け、CalPERS自身がその運営を引き受けるとしている。
PRIの年次総会は9月にドイツ・ベルリンで開かれる。そこで提案し、実際の100社の選別と、100社へのエンゲージメント活動のゴーサインは、11月にボンで開くCOP23で打ち上げる考えだ。PRIの署名機関のネットワークを具体的に活用する共同活動でもある。
共通エンゲージメント活動に参加する投資家は、覚書を締結し、エンゲージメント活動の実施を宣言することになる。対象となる100社に対するエンゲージメント活動は、当該企業が所在する地域、国の機関投資家が主導することになるので、日本の場合、年金積立金管理独立行政法人(GPIF)がこの活動に参加するかどうかが、一つの焦点になる。
GPIFはPRIへの署名参加などで、CalPERSの協力を受けた経緯がある。CalPERSのサステナビリティ部門の投資責任者であるAnne Simpson氏は「一つのアライアンス(連合体)として、われわれはこれらの企業に対して同じ質問をすることで、グローバルに共同の影響を与えることができる」と説明している。そうしたアライアンスを形成するうえで、世界最大の公的年金であるGPIFの参加は重要な位置を占めるのは間違いない。