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CalPERSが、CO2排出量の多い世界の100社を対象とした機関投資家による「共通エンゲージメント行動」を国連責任投資原則(PRI)の署名機関に呼びかけ。日本のGPIFも賛同するか(RIEF)

2017-08-23 15:44:56

 

  米国最大の公的年金のカリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)は、世界のCO2排出量に影響の大きい100の企業をターゲットにして、各国の機関投資家等が「共通エンゲージメント行動」をとる「Global Climate 100 Initiative」を、来月開く国連の責任投資原則(PRI)年次総会で提案する方針を明らかにした。

 

 

 (映像は、CalPERSが8月14日に開いた投資委員会)

 

 CalPERSは1年半にわたって自らの投資ポートフォリオが抱えるカーボンフットプリントを調査した。その結果、ポートフォリオ全体の排出量の50%は、約80の大企業が寄与していることを突き止めた。また他の大規模機関投資家の場合もほぼ同様に、投資対象全体のCO2排出は特定少数の企業からに集中し、他の投資家と共通の投資先になっていることがわかった。

 

 このことは、投資家として投資先企業に気候変動問題への対応を求めるエンゲージメント活動の対象先が共通化できることを意味する。そこで、CalPERSは、グローバルに共通エンゲージメント先企業を100社選別し、「チームを組んで、共同で働きかける枠組み」の構築を提案することにした。

 

 すでに多くの年金基金のほか、Ceresのような環境NGO、PRIなどからも提案に対する関心が寄せられている。CalPERSの計画では、地域ごと、あるいは国ごとに資産保有機関と資産運用機関がネットワークを形成、CO2排出量の多い企業を共通エンゲージメント戦略の対象に選ぶ。ターゲットとする100社全体への対応等を円滑に進めるため、運営委員会を設け、CalPERS自身がその運営を引き受けるとしている。

 

 CalPErsキャプチャ

 

 PRIの年次総会は9月にドイツ・ベルリンで開かれる。そこで提案し、実際の100社の選別と、100社へのエンゲージメント活動のゴーサインは、11月にボンで開くCOP23で打ち上げる考えだ。PRIの署名機関のネットワークを具体的に活用する共同活動でもある。

 

 共通エンゲージメント活動に参加する投資家は、覚書を締結し、エンゲージメント活動の実施を宣言することになる。対象となる100社に対するエンゲージメント活動は、当該企業が所在する地域、国の機関投資家が主導することになるので、日本の場合、年金積立金管理独立行政法人(GPIF)がこの活動に参加するかどうかが、一つの焦点になる。

 

 GPIFはPRIへの署名参加などで、CalPERSの協力を受けた経緯がある。CalPERSのサステナビリティ部門の投資責任者であるAnne Simpson氏は「一つのアライアンス(連合体)として、われわれはこれらの企業に対して同じ質問をすることで、グローバルに共同の影響を与えることができる」と説明している。そうしたアライアンスを形成するうえで、世界最大の公的年金であるGPIFの参加は重要な位置を占めるのは間違いない。

 

 もう一つの課題は、「Global Climate 100 Initiative」の参加機関はPRIの署名機関が中心になるが、PRIネットワークが十分に発達していない国、たとえばロシア、インド、ブラジルなどの企業に対して、どのように共通エンゲージメント活動を展開するかという点だ。この点については今後、PRIと協議していく、としている。

 

 Simpson氏は「パリ協定でわれわれはグローバルな政策的枠組みを得た。今必要なのは、その枠組みに基づいて金融市場によるイニシアティブを発揮することだ」と強調している。

https://www.calpers.ca.gov/