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スイス・チューリッヒ保険 20億㌦のグリーンボンド投資目標を達成。3年半で。総資産の約1%をグリーンボンド投資に充当(RIEF)

2017-09-04 22:34:02

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   スイスの大手保険会社チューリッヒ保険は、グリーンボンドの購入数値目標としていた20億㌦(約2200億円)を達成した、と公表した。目標表明から3年半での達成で、75の発行体の120以上のグリーンボンドを購入し、グローバルなグリーンボンド市場の育成に貢献した。

 

 チューリッヒは2013年11月に途上国市場をターゲットにしたグリーンボンドを10億㌦購入する公約を掲げた。その時点でグローバルなグリーンボンド市場の規模は200億㌦以下だったので、その5%を同社が投資対象として宣言したことになる。

 

 その後、2014年7月に目標額を倍増させて20億㌦とした。この目標額もその時点では、他の投資家に比べて最大の公約額だった。同社が最初に購入したグリーンボンドは国際公的金融機関の国際金融公社(IFC)発行のもの。120本以上の投資グリーンボンドはドル、ユーロなど7つの通貨建てとなっている。

 

 同社の運用資産総額は2000億㌦なので、ほぼ1%分をグリーンボンド投資に充当したことになる。日本では、日本生命がこれまで2000億円のグリーンボンド投資目標を公約してほぼ達成し、今年からの新中期経営計画では目標額を3500億円に引き上げている。ただ、日生のグリーンボンド目標を総資産比(単体)でみると0.6%で、チューリッヒの1%よりは下回る。

 

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 チューリッヒが今回、公表した投資内訳によると、投資総額は現在21億㌦で、投資額ベースでは全体の51%がIFCや欧州投資銀行(EIB)などの国際公的金融機関の発行分。24%は企業発行分で、主な企業はスペインの Iberdrola やフランス国鉄(SNCF)など。14%は銀行分で、11%はイルドフランスなどの自治体発行分となっている。

 

 同社のNYに拠点を置く責任投資部門の担当、Manuel Lewin氏は「20億㌦の目標を達成しようと思えば、世界銀行などの発行分を市場からかき集めてもっと早く達成できた。しかし、我々の目的の一つは、グリーンボンド市場形成と市場の発展を支援する点にあった」と、幅広いグリーンボンド投資を展開してきた意義を強調する。

 

 ただ、同社のグリーンボンド・ポートフォリオの実績は、主に同じ発行体からのグリーンボンド認証無しのボンドが多いという。これは、同社がグリーンボンドの第三者認証に必要な追加的コストの支払いを避ける方針をとってきたことを示している。その結果、「グリーンボンド投資は市場レートでの利回りを見込めており、システマティックなアウトパフォームもアンダーパフォームもしていない」と安定投資対象であるという。

 

 20億㌦のグリーンボンド投資の結果、同社の資産から約300万㌧のCO2排出量を削減できた計算になる。これはスイス最大の都市であるチューリッヒ市の年間総排出量の3倍になる。Lewin氏は「われわれは、グリーンボンドについてよく知らないまま投資活動を始めた。しかし、この間、個々のボンドと個々の発行体ごとの評価で多くのことを学ぶ機会を得た」と自己評価している。

 

 同社にはグリーンボンド投資に従事する専門家の数が24人に達している。Lewin氏は「成長し始めたグリーンボンド市場は、さらに発展し続けるだろう。今後はグリーン性の評価をもっと高める方向に展開するだろう」と展望している。

 

 グリーンボンド市場拡大に影響を及ぼしそうな点は、先にEUの「High Level Expert Group on Sustainable Finance (HLEG)委員会」が公表した中間報告の中で、「グリーン性の標準化」を求める提言だ。Lewin氏は「この点はまさに大きな課題であり、標準化は実現されねばならない」と強調している。ただ、同社自身は、今回達成した20億㌦目標に代えて、新たな目標を設定するかについては、明確な言明は避けている。

 

https://www.zurich.com/en/knowledge/articles/2017/08/using-our-investment-management-expertise-to-increase-resilience