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英国のスコットランド自治政府、英国のガソリン車・ディーゼル車販売禁止策を8年前倒し2032年実施を宣言。気候変動対策で新たに「スコットランド国営投資銀行」も設立へ(RIEF)

2017-09-11 08:00:58

Scotland4キャプチャ

 

 英スコットランドの自治政府首相であるニコラ・スタージョン氏は、英政府が先に打ち出したガソリン車・ディーゼル車を2040年に新規販売禁止とする方針を受けて、スコットランドはそれを8年前倒しし、2032年までに禁止する、と明言した。さらに気候変動対策等のインフラ整備をEUレベルで推進するため、スコットランド国営投資銀行(SNIB)の設立も目指す。

 

 スタージョン氏は、2017~18年のスコットランド政府プログラムとしてこれらの新施策を盛り込む。ガソリン車・ディーゼル車販売規制については気候変動法(Climate Change Bill)を新たに制定する。SNIBの設立はエジンバラを拠点とするTesco Bankの協力を得て推進しているとし、活動の対象はスコットランドだけではなく、欧州諸国での再エネ・省エネ事業等への金融的支援も行うとしている。

 

 

スタージョン・スコットランド自治政府首相
スタージョン・スコットランド自治政府首相

 

 ガソリン車・ディーゼル車の新車販売禁止は、英政府が7月に、2040年までに導入する方針を打ち出した。すでにフランスやオランダも同様に2040年の規制導入を宣言しているが、スタージョン氏はこの規制をスコットランドが「欧州最速」で実施することで、スコットランドを、低炭素化・デジタル化・ハイテク分野での欧州全体の拠点として位置を確保することを目指すとしている。

 

 また、ガソリン車・ディーゼル車に代わる電気自動車の普及促進のため、スコットランド全域での電気チャージ・ステーションを優先的に整備する方針や、アバディーン地区で計画されている、カーボンを吸収する二酸化炭素回収貯留(CCS)事業の継続も言明した。同事業については英国政府が資金拠出を停止し、実用化が危ぶまれていた。SNIBの設立は、こうしたファンディング需要も踏まえているとみられる。

 

 スタージョン氏は、「われわれは今、予想し難いグローバルな挑戦と変化の時代に生きている。技術の急速な前進を促し、気候変動に挑戦する道義的な義務を持っている。これらの挑戦は容易なことではないが、それはまたわれわれにとってチャンスでもあり、雇用にもつながる」と強調した。

 

 また「われわれは、デジタルで、ハイテク、低炭素な技術の発明者、製造者になることを目指すべきで、単にそららの使用者に留まるべきではない」とも述べ、スコットランドの将来を低炭素経済社会への移行に伴う世界の研究、デザイン、製造センターに変貌させるとの展望を描いた。

 

Scotland2キャプチャ

 

 そうした計画の軸の一つになるとみられるのが、SNIBの設立だ。英国政府は先に、世界で初めて設立したグリーン投資銀行(EIB)を民間に売却したが、SNIBはそれに代わるグリーン政策投資銀行であるほか、投融資対象をスコットランドだけでなく、欧州諸国全体に置いている点が特徴だ。

 

 スコットランドは、域内で開発した風力発電や将来の潮流発電等による電力を、欧州大陸に売電する計画を進めている。SNIBは欧州大陸側の電力網や再エネ事業等への投融資も想定しているとみられる。SNIBの設立は自治政府の経済諮問評議会(CEA)の提言に組み込まれていた。エネルギー分野だけでなく、広く社会基盤の強化・改善にも取り組むという。

 

 SNIBの設立準備に参画するTesco Bankは、英国の食品小売り大手のTescoが英銀RBSと1997年に設立した銀行。その後、TESCOが全株を取得し、現在はTESCOグループの銀行となっている。CEOのBenny Higgins氏は「スタージョン氏に新銀行設立の相談を受けて光栄だ。スコットランドが経済のすべての分野で、長期的に持続可能な成長を続けるうえで、新銀行は重要な役割を果たすだろう」と述べている。

 

https://news.gov.scot/news/programme-for-government-1