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不祥事発覚の神戸製鋼、MSCIのESG企業指数では、最上位から二番目の高い評価のAA格付。日産自動車、電通なども「ESG良好企業」として投資対象に(RIEF)

2017-10-13 16:27:27

MSCI6キャプチャ

 

   年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が日本株のESG運用のために採用したMSCI ジャパン ESG セレクト・リーダーズ指数の構成銘柄の”不祥事”が相次いでいる。無資格従業員による検査が発覚した日産自動車、検査データを改ざんしていた神戸製鋼所など。神戸製鋼は同指数のESG格付で最上位から2番目の高い評価を得ている。ESG評価の難しさを浮き彫りにした形だ。

 

 MSCIジャパンESG指数はGPIFが採用した株運用のESG指数3つのうちの1つ。構成銘柄は251社。MSCIのサイトでの説明によると、MSCI ジャパン IMI トップ 500 指数を親指数とし、業種に偏りの出ないよう ESG 評価の高い銘柄を選定して構成したとしている。MSCIは同指数を「ESG リスクを低減し た市場ベンチマーク」と位置付ける。

 

 だが構成銘柄のうち、最近になって、不祥事やトラブル、訴訟沙汰などが発覚したり、メディアで取り上げられた企業は少なくない。神戸製鋼と、日産自動車のほか、子会社の富士ゼロックスによる海外での不正会計処理が見つかった富士フィルム、新人社員が過労自殺した電通、社員のいじめ自殺訴訟を提起された三菱電機、集団訴訟が広がるレオパレスなど。

 

ESG1キャプチャ

 

  MSCIのESGリサーチは、世界 6,000 銘柄以上について環境・社会・ガバナンス特性を調査し、リサーチや 格付け等を提供している。同社担当者の説明によると、 MSCIジャパンESG指数はこのESG リサーチが提供するデータを使用して、AAAからCCCまでの9段階のESG格付をつけている。この格付評価の中に不祥事スコアを 反映させる仕組みという。

 

 不祥事スコアは、企業の操業・製品・サービスから ESG に関してネガティブな不祥事が発生した場合に評 価するもので、国際的規範である UN Declaration of Human Rights や ILO Declaration on Fundamental Principles and Rights at Work、UN Global Compactなどと整合的に評価する。

 

ESG2キャプチャ

 

 不祥事スコアは 0-10 のスケールで付与され、0 が最も低い。ESG 格付けが CCC または不祥事スコアが 0 の採用銘柄については除外される。不祥事スコアの程度はESG格付にも反映される。ただ、スコアが直ちにESG格付に上乗せされるわけではなく、程度に応じて、年間レビューの際に格付に反映させる場合と、臨時に反映させる場合など、ケースバイケースのようだ。現在のところ、神戸製鋼も日産も、そうした臨時の見直し対象になっていないようだ。

 

 主だった最近の「不祥事企業」のESG格付は、神戸製鋼が上から二つ目のAA、富士フィルム、三菱電機はそれぞれ三番目のA、日産、電通はBB、レオパレスBBBなど。神戸製鋼の場合、素材産業の中で、相対的に高い格付を得ている。

 

不祥事スコアリング
不祥事スコアリング

 

 MSCI には 170 人の経験豊富なアナリストが在籍し、37 の重要な課題(ESG キーイシュー)に関する膨大な 数のデータを企業のコアビジネスとの関連性から分析し、企業に重大な影響を及ぼす可能性のある産業特有の 課題を取り上げているという。ただESGの評価の中でも、ガバナンスはもっとも定量化が難しく、データ分析だけでつかみづらい側面があるのも事実だ。

 

 MSCIでは、不祥事スコアをその深刻度(損失額・被害者数等)と構造的事象か一過性の事象か、現在進行形か終結したかによって評価を分け、その結果は、不祥事スコアのほか、 Flag の色(赤/オレンジ/黄色/緑)などで示すとともに、対象企業の不祥事レポートも発行する、としている。

 

 MSCI ジャパン指数構成銘柄(319 社)のうち、約 60%の企業が グリーンフラッグで、24%が中程度から甚大な不祥事 があるが、構造的な問題がないとしてイエローフラッグと評価されている。14%が甚大で構造的な不祥事を起こしているオレンジ フラッグ。 現在、MSCI ジャパン指数構成銘柄でレッドフラッグは東京電力と東芝の 2 社。

 

https://www.msci.com/esg-integration