年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF) 世界銀行グループと、債券分野でのESG運用統合化の調査研究で提携。他の投資家にもESG運用拡大を呼びかける(RIEF)
2017-10-12 21:28:19
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は世界銀行グループとの間で、債券分野のポートフォリオに、ESG評価を統合化して持続可能なソリューションを高めるための投資方法を開発することで提携した、と発表した。両者は今回の合意を「ファーストステップ」と位置づけ、今後、より広範な協力関係を目指す姿勢を示している。
GPIFは総資産1兆3300億㌦(約149兆円)を抱える世界最大の年金基金。世銀グループは、国際金融公社(IFC)、国際復興開発銀行(IBRD)、国際開発協会(IDA)、多国間投資保証機関(MIGA)、国際投資紛争解決センター(ICDSID)で構成する。
提携の最終目的は、「より多くの資本を持続可能な投資に振り向けること」としている。両者の債券投資等の資金運用において、ESG評価を定着させるだけでなく、他の多くの投資家に対しても資産運用に際してESG基準を組み入れるよう呼びかけていくとしている。
債券分野にフォーカスした取り決めを結んだのは、株式分野ではESG投資の研究や実践がそれなりに進んでいるが、債券分野では「解決すべき課題が多くある」(GPIF)との判断による。両者の提携によって、債券投資でのESG評価のベンチマーク、ガイドライン、格付手法、公表の枠組み、報告のひな形、リスク分析など、実務的な課題に関して共同で研究を行う、としている。
GPIFの高橋則広理事長は、「今回の共同研究は、グリーンボンドやソーシャルボンドに限らず、一般的な国債や社債も含めた幅広い債券を対象に、ESGを考慮することによる投資機会、制約、解決策などを分析する先駆的な試み。GPIFは、他の年金基金や投資先企業と意見を交換するフォーラムを開催するとともに、ファイナンス分野の若手研究者を表彰するアワードを実施しており、世界銀行グループと行う今回の研究についても、その成果を他の機関投資家や研究機関などと共有するオープン・リサーチ・プラットフォームとしたい」と説明している。
世界銀行グループの ジム・ヨン・キム総裁は「我々は、民間部門からのより多くの貢献なくしては持続可能な開発目標(SDGs)を達成し、世界からの高まる切望に応えることはできない。我々の経験は、優れたESG基準が優れた投資となることを示している。現在、40兆㌦以上もの資金の運用難が続いており、より良いリターンを求める投資家にとって好ましい状況ではないが、我々にとってまたとない機会だ」と語っている。