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欧州投資銀行(EIB)幹部、グリーンボンド基準の統一化を提唱。基準・ガイドラインの乱立は市場の成長の障害(RIEF)

2017-10-31 23:40:07

EFNYキャプチャ

 

 欧州投資銀行(EIB)の幹部が、グローバル資本市場で拡大するグリーンボンドについて、「定義や評価尺度などが複数広がることは、資本の流れの制約になり、市場の成長を鈍らせる」と警告した。現在、国際市場では国際基準としてグリーンボンド原則(GBP)があるが、中国やインド、それに日本が独自の国内基準やガイドラインを公表している。そうした尺度の乱立に警鐘を鳴らした形だ。

 

 発言したのは、EIB資本市場局の投資家リレーション・マーケティング部門責任者のIrene Sanchez Aizpurua氏。EUの欧州委員会がサステナブルファイナンスのフレームワークづくりを進める「High-Level Expert Group on Sustainable Finance(HLEG)」の委員も務めている。このほどニューヨークで開いた「Environmental Finance’s Green Bonds Americas conference」に出席した。

 

Irene Sánchez Aizpurúaさん
Irene Sánchez Aizpurúaさん

 

 Sanchez Aizpurua氏は「あるケースでは、投資家やセカンドオピニオンを請け負うESG評価会社などは、グリーンボンドの資金使途等のコンプライアンスを評価する際に、多い場合は4人もアナリストを要しなければならない」「グリーンボンド市場拡大の大きな障壁は、複数の定義やガイドラインの存在だ」と指摘した。

 

 同氏は、「現在、市場で起きていることは、異なった基準やガイドラインに準拠したグリーンボンドが混在しているので、投資家が他の基準に基づくグリーンボンドにアクセスする評価等の妨げが生じている」と述べた。グリーンボンドの流動性に支障が起きているとの認識だ。

 

 実際、中国は2015年に設定した国内ガイドラインに基づくグリーンボンドの発行を進めているが、欧米の機関投資家等は国際基準のGBPとの比較が容易ではないことから、投資意欲を示していないとされる。日本の環境省が今春発行したガイドラインは、GBPよりも要求レベルが緩いことを売り物にしているが、現在までのところ、公益事業体である独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT)の発行しかない。

 

 Sanchez Aizpurua氏が参加するHLEGは、重要な検討テーマの一つに、「欧州共通のグリーンボンド基準」をあげている。同氏は、「現在、われわれが主に活用している基準、尺度はすでに欧州にあるものと、中国のもの」と言及、GBPを事実上のEUスタンダードとして、現行の自主的基準からEU認定の国際基準に格上げする考えを示した。

 

 さらにグリーンボンドの事業分野やクライテリアなどについても「異なった定義・分類がある。異なった対象領域や、時には複数の定義の混合もある。われわれはそうした分野を対象としたグリーン投資政策を解きほぐし、グリーンボンドの発展に資する主要な適格クライテリアを明確化しようとしている」と述べた。

http://www.unepfi.org/events/environmental-finances-green-bonds-americas-2017/