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中国国営の中国工商銀行(ICBC)初の「一帯一路グリーンボンド」発行。総額21億5000万㌦のビッグディール。国際的なグリーン評価高く。日本の鉄道運輸機構の「国内向け」とは対照的(RIEF)

2017-11-22 01:06:47

ICBC1キャプチャ

 

   中国の国営銀行の一つ中国工商銀行(ICBC)が初の「一帯一路(Belt and Road Initiative:BRI)グリーンボンド」を発行した。発行額は総額21億5000万㌦の大型ボンドで、ドル建てとユーロ建てで構成する。ボンドはルクセンブルクのグリーン証券取引所(LGX)に上場された。調達資金は中国内外での一帯一路事業の再生可能エネルギー事業や、省エネ、持続可能な水資源開発等のグリーン・インフラ・プロジェクトに充当されるという。

 

写真は、ICBCの初の「一帯一路グリーンボンド」のルクセンブルク証券取引所上場のセレモニー。左端は証取CEOのRobert Scharfe氏、右端がICBCのルクセンブルク支店長のChen Fei氏)

 

 ICBCがグリーンボンドを発行したのは今回が初めて。総額21億5000万㌦の「一帯一路グリーンボンド」は、11億ユーロ、4億5000万㌦、4億㌦の3本のボンドで構成され、償還期間は3~5年に設定されている。中国企業発行のユーロ建てグリーンボンドとしては過去、最大規模となる。

 

 ICBCは9月に、自行のグリーンボンドフレームワークを開発している。国際基準であるグリーンボンド原則(GBP)のほか、中国のグリーンファイナンスシステムのガイドライン、人民銀行による国内グリーンボンドガイドライン等を参照基準としている。また資金使途の除外対象として、①化石燃料関連の資産②大規模水力発電所③原子力発電と原子力関連資産――を明記している。

 

 今回の「一帯一路(BRI)グリーンボンド」はGBPの基準よりも厳しい上場審査を持つLGXに上場したほか、セカンドオピニオンも厳格なグリーン評価で知られるノルウェーのCICEROから、もっとも環境配慮の高い「dark green」の格付を取得した。同ボンドのグリーン性は極めて高い水準にあることが立証された形だ。英非営利法人Climate Bonds Initiative(CBI)が発行するClimate Bonds Standards(CBS)の認証も得ている。

 

 これに対して日本では、GBPの原則に完全に適合しなくても、国内では「グリーンボンドと呼ぶ」とする環境省のガイドラインに準拠して、このほど独立行政法人 鉄道建設・運輸施設整備支援機構が200億円のボンドを発行した。同ボンドは国内の生保や学校法人などが相次いで購入した。ただ、欧米の機関投資家の投資購入は報告されていない。

 

 中国の発行体が、国内ガイドラインよりも国際基準に、それも高いレベルでの適合を実践しているのに対して、3メガバンクなどを除く日本の発行体、投資家のグリーン認識のレベルはどうなのか。官民合わせて「中国より劣る国内グリーンボンド市場」で甘んじようとしているかのように映る。

 

 ICBCのBRIグリーンボンドは、「グリーン信用力」の高さのため、発行額の70%を欧州のESG投資家や保険会社、ソブリンファンド、企業などが競って購入した。調達資金の使途は①再生可能エネルギー②低炭素、低排出交通手段③エネルギー効率化(省エネ)④持続可能な水利用と排水管理、の4分野で、中国内外のプロジェクトに充当される。

 

 ICBCのルクセンブルク支店長の Mr. Chen Fei氏は「ICBCは、長期戦略の中にグリーンファイナンスを統合している。『一帯一路イニシアティブ』を推進しながら、銀行としての責任投資を促進していく。国際グリーン資本市場を開拓することで、環境ベネフィットを伴うプロジェクトへファイナンスする新しい道筋をつけてくれる」と評価している。


 ICBCは2016年末時点で、全法人向け貸出の14.2%に相当する9786億人民元(約16兆6000億円)を省エネ、環境配慮の製品・サービス等に振り向けている。中国の法人向け融資全体の平均より、6.8ポイント高い成長率を誇っている。

https://www.bourse.lu/pr-icbc-lists-belt-and-road-climate-bond