HOME6. 外国金融機関 |米ニューヨーク州の公的年金基金、気候変動対応に前向きな企業に投資する「低炭素インデックスファンド」を40億㌦(約4400億円)に倍増。サステナブル投資を重視(RIEF) |

米ニューヨーク州の公的年金基金、気候変動対応に前向きな企業に投資する「低炭素インデックスファンド」を40億㌦(約4400億円)に倍増。サステナブル投資を重視(RIEF)

2018-02-05 08:00:01

低炭素インデックスファンドの投資増額を公表するディナポリ氏

 

 米ニューヨーク州の財務長官、トマス・ディナポリ氏は、同州の公的年金で全米第三番目の規模の「ニューヨーク州退職年金基金(New York State Common Retirement Fund)」が気候変動対策で設定している低炭素インデックスに基づくファンドの運用規模を20億㌦から倍の40億㌦(約4400億円)に増額する方針を明らかにした。この結果、同年金のサステナブル投資総額は70億㌦を上回る。

 

   NYCRFは総資産額2013億㌦(約24兆2000億円、2017年9月末時点)を抱える。低炭素インデックスファンドは、2016 年1月にゴールドマンサックス・アセットマネジメント(GSAM)の協力でスタートした。既存のRussel 1000インデックスなどの米国大型株対象のパッシブ運用のインデックスを元に、それらの企業株のうち、気候変動対策を促進する企業等を選別して立ち上げた。

 

 対象企業選定の条件には、カーボンフットプリントの情報開示の有無と、そのフットプリント削減のための活動をしているかどうかを判断基準に加えている。その判断の一つとして、CDPへの情報開示データ等を参考にしている。当初の資産規模は20億㌦。低炭素ファンドインデックスのカーボンフットプリントは、ベンチマークより、75%も低い。

 

 米国の公的年金で、気候変動に影響を及ぼす企業を除外したインデックスファンドの立ち上げは初めてだった。現在、同ファンドの運用リターンは16年1月の設定以来、16.5%の利回り。ベンチマークのRussell 1000の同期間の16.8%と比べても、遜色はない。

 

NYCRFのオフィスが入居するニューヨークのビル
NYCRFのオフィスが入居するニューヨークのビル

 

 ディナポリ氏は、「投資価値を損なうことなく、低炭素推進企業株を保有することに成功してきた。われわれのNYCRFは、低炭素経済を築く世界的な努力の最前線でけん引役となっている。われわれの投資判断と株主としてのエンゲージメントは、企業に対して警告を与えている」と投資効果を強調した。

 

 NYCRFの最高投資責任者(CIO)のVicki Fuller氏は「気候リスクをマネージすることは、プラスの長期投資リターンを確保するためのカギになる。われわれの低炭素インデックスファンドの成功は、さらに今後、低炭素企向け投資を拡大するとともに、他の機関投資家にとってのモデルになることを確実にしている」と胸を張った。

 

 また環境NGOのCeresの代表兼CEO、Mindy S. Lubber氏も同州とNYCRFの追加ステップを高く評価している。「NYCRFの発表は、気候変動リスクをマネージするとともに、クリーンエネルギーの未来への投資機会を確保する健全で責任ある一歩だ」と称賛しのコメントを出している。

 

 ファンドを運営しているGSAMのESG・インパクト投資部門のグローバル責任者であるHugh Lawson氏は「このファンドは、気候変動を促進する企業を多面的にかつ、しっかりとサポートする活動を展開する市場のリーダーである」と位置付けている。

 
 ディナポリ氏は2007年に就任して以来、「サステナブル投資プログラム」を推進してきた。今回の低炭素インデックスファンドの積み上げで、NYCRFのサステナブル投資総額は70億㌦を上回るが、同インデックス運用に加えて、多様なアセットクラスでのサステナブル投資を推進している。

 

 たとえばGeneration Asset Managementと共同で4億㌦の運用をしているほか、Rockefeller Asset Management Global Sustainability and Impact Strategyと共同で3億㌦、Rise Impact Fundと1億5000万㌦など。またグリーンビルディング投資でもLEEDのゴールド認証物件への投資や世界銀行のグリーンボンドなどにも積極的に投資している。

 

 こうしたサステナブル投資を強化するため、アンドリュー・クオモ同州知事は2017年12月に、2018年の施政方針としてNYCRFの資産運用から、化石燃料への新規投資を停止する方針も打ち出している。

 

 さらに同州とマサチューセッツ州は、エクソンが早期の段階で温暖化のリスクを知ったのに、その情報を投資家や顧客に開示せず、リスクを高めた可能性があるとして、2016年6月以降、調査を続けている。ニューヨーク市は、エクソンのほか、シェル、BPなど5つのメジャー企業を気候変動を悪化させたとして、その損害回復を求めて訴訟を提起している。投資と政策対応の両面で、低炭素化を後押ししているわけだ。

https://www.osc.state.ny.us/

https://www.osc.state.ny.us/press/releases/jan18/013118.htm