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温室効果ガス排出量の多い企業に機関投資家が削減圧力をかける「Climate Action 100+」 。現行の標的100社に加え、50社を追加へ。日本企業は現在10社が対象、追加は何社か(?)(RIEF)

2018-02-21 20:05:59

 

 気候変動抑制のため、温室効果ガス(GHG)排出量が世界的に多い主要排出企業を特定し、資産運用の立場から削減圧力をかける「Climate Action 100+」キャンペーンを展開するCalPERS(カリフォルニア州職員退職年金基金)等は、対象排出企業を現在の100社から、さらに50社を追加する。現在、追加企業を選出中で、日本企業が何社入るか、注目される。

 

 CA100+キャンペーンは、パリ協定の実現を目指した「2014/15Global Investor Statement on Climate Change(GISCC)」の宣言に基づき、昨年12月に、CalPERS、CalSTRS(カリフォルニア州教職員退職年金基金)、スウェーデンの公的年金AP1~APGなどの公的機関ほか、AXA、Allianzなどの民間金融、資産運用等256機関(資産総額28兆㌦)が署名し、グローバルな直接共同行動として展開しているものだ。

 

 機関投資家による気候変動対策などの責任投資の行動は、国連支援の責任投資原則(PRI)が知られる。ただ、PRIは署名機関数は多いものの、投資先の企業に対する具体的な共同行動などはとっていない。PRI自体、署名だけして活動しない機関の増大に苦慮しているとされ、最近、除名手続きを整備したほどだ。

 

 これに対して、CA100+は共同行動対象企業を選別、それらの企業に対して①気候変動リスク・機会をモニタリングし、経営層としての説明責任を果たすガバナンス構造の実施②パリ協定と整合性のあるGHG削減行動をバリューチェーン全体で実施する③金融安定理事会(FSB)の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の報告に沿った情報開示の向上--の3点を要請する行動を展開している。

 

CA+2キャプチャ

 

 共同行動の対象となっている100社には、日本企業も、新日鉄住金、トヨタ自動車、ホンダ、東レなど10社が選別されている。100社中、10社なのでちょうど1割に相当する。このため50社の追加だと、同じ比率ならば日本企業が5社追加されても不思議ではない。

 

 業種的には、現在の100社中、エネルギー部門の企業が13社で、グローバルな企業の排出量全体に占めるエネルギー産業の比率42%に比べると、少な過ぎるとの指摘がある。実際、日本勢も10社中、エネルギー企業はJXホールディングスだけ。このため電力・エネルギー企業の追加が見込まれる。米国では First Energy と PPL の両社、アジアでは香港のAsia CLPHoldingsなどが候補とされる。下馬評では日本勢の名前は取りざたされていないが、電力会社が入る可能性がある。

 

 もう一つの注目点は 、投資家サイドにある。企業に対する株主としての共同行動には多くの機関投資家が加われば加わるほど、影響力は高まる。ただ、現在のところ、米国の民間資産運用会社で世界最大の5兆1000億ドルの運用規模を誇るBlackRockやVanguard、33兆㌦のカストディアン業務をグローバルに展開している State Streetグループ、などは署名していない。

 

 これらの影響力の大きい米系投資家グループとの署名交渉は当初、先月末までに完了し、追加の50社もその段階で公表されると期待されていた。しかし、交渉は長引いているようだ。このため追加50社の公表が先に行われる見通しで、3月中にも発表される可能性がある。

 

 資産運用会社の企業への直接行動は、株主総会での議決権行使と直結することから、GHG排出量の多い企業は、明確な削減行動を説明しないと、株主総会を乗り切るのが容易ではなくなるうえに、安定的な投資家資金を集められない可能性も高まる。

http://www.climateaction100.org/