HOME6. 外国金融機関 |欧州委員会のサステナブルファイナンス行動計画に対して、欧州の資産運用業界団体EFAMAが反発。受託者責任の法制化に難色(RIEF) |

欧州委員会のサステナブルファイナンス行動計画に対して、欧州の資産運用業界団体EFAMAが反発。受託者責任の法制化に難色(RIEF)

2018-03-13 17:47:44

efamaキャプチャ

 

  欧州の資産運用業界の団体である「欧州ファンド・アセットマネジメント協会(EFAMA)」は、欧州委員会が先にまとめた「サステナブルファイナンス行動計画(SFAP)」において、資産運用(アセットマネジメント)事業と、資産保有者に対して、投資判断のプロセスにおいてサステナビリティ要因を統合化する受託者責任を法的義務にすることを提唱したことに対して、強く反発する見解を公表した。

 

 

 欧州委員会のSFAPは、先にサステナブルファイナンスに関するハイレベル専門家会合(HLEG)が公表した最終報告を受ける形で、今月8日、10項目の行動計画を盛り込む形で公表された。EFAMAが強く反発したのは、この中で、現行の資産保有・資産運用事業では、サステナビリティ要因を体系的に考慮するまでに至っていない、と断じた点だ。http://rief-jp.org/ct4/77527?ctid=71

 

  同協会は、SFAPがサステナブルファイナンスのタクソノミー(サステナブルな金融活動を定義づけるEU独自の分類システム)の開発を提唱したことや、情報開示促進の視点等を打ち出したことなどについては歓迎の意向を示している。しかし、欧州委員会が、「各種の分析によると、機関投資家と資産運用機関は、投資判断の中にサステナビリティ要因とそのリスクを体系化できていない証拠がある」と断じた点について、強く反発している。

 

 日本だけでなく、欧州でもESG投資やサステナビリティ投資をうたい文句にして、資産運用業界はサステナブル投資を盛り上げる活動を展開している。そうしたキャンペーンとは裏腹に、投資判断にはサステナビリティ要因やリスク評価が盛り込まれていない、と委員会に断じられた形だからだ。

 

 efama1キャプチャ

 

 EFAMAは欧州28カ国の63の資産運用機関で構成する業界団体。同協会加盟機関の運用総額は23兆ユーロ(約3000兆円)で、有力な圧力団体でもある。EFAMAは反論として、むしろ逆に、「最近ではサステナビリティ要因を投資判断の際に統合する動きが増えているという証拠がある」と強調した。

 

 さらに、欧州の資産運用業界は「サステナビリティを投資プロセスの中心部分に位置づけており、 あらゆる種類の責任投資の発展を支援してきている」と主張している。欧州委員会は、SFAPの中で、サステナビリティに関する投資家の受託者責任(フィデシャリー・デユーティー:FD)を担保するための法制化の考えを打ち出たが、これについて否定的見解を示している。

 

 EFAMAがFDの法制化を否定する理由のひとつは、サステナブルなプロジェクトへの投資や投資判断は、資産保有機関の判断によるもので、資産運用機関は資産保有機関の投資・インパクト目標と離れて、自らがサステナブルな金融商品を創りだせるわけではない、というもの。もう一つの理由として、サステナビリティのアプローチは、経済活動とリンクしているほか、イノベーションや企業行動とも連動して長期的に発展していくものであり、法規制になじまない、としている。

 

 さらにESGの要因自体も、経済政策によって変化する、と指摘している。したがって、規制によって義務的なサステナビリティの必要事項を投資に課しても、そうした規制はESGをコンプライアンスのチェック項目のように扱うことになってしまい、本来のESG評価につながらない、と警告している。

 

 こうした指摘をしたうえで、EFAMAは「サステナブルファイナンス課題は、市場主導のアプローチを重視すべきで、市場の発展に不必要な障壁を作り出すことは避けねばならない。あらゆる法規制的なイニシアティブは、ポジティブな市場主導のトレンドが繁栄することを確かめながら、注意深く検討されねばならない」と、委員会に自重を求めた。FDの法制化に反対する意見は、欧州の年金団体で作るPensionsEUropeも否定的コメントを提出している。https://www.pensionseurope.eu/system/files/Investor%20Duty%20Consultation%20PensionsEurope%20Response.pdf

 

 これらの指摘の背景にあるのは、EUの官僚機構の規制主義への反発ともいえる。SFAPについては、すでにグリーンアセットを銀行の自己資本比率規制で優遇する提案に対して、欧州内の中央銀行幹部らが反対の姿勢を明確に示している。HLEGを受けて行動計画を打ち出した欧州委員会だが、サステナビリティを全面に掲げた理想主義と、現実主義との一致点を見出す必要があるようだ。 http://rief-jp.org/ct6/77566

http://www.efama.org/Pages/EFAMA-Statement-%E2%80%93-European-Commission-Action-Plan-on-Financing-Sustainable-Growth.aspx