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仏中央銀行のフランス銀行、自らの年金資産等の運用にESG評価を導入。石炭関連、地雷・クラスター爆弾、人権問題関連の企業等は投資対象外に(RIEF)

2018-04-02 20:05:26

franceキャプチャ

 

  仏中央銀行のフランス銀行は、同行の行員向け退職年金基金と内部の財務ファンド合計200億ユーロ(約2兆6000億円)の運用方針に、新たに制定した責任投資憲章に基づく責任投資(RI)方針を導入した。石炭関連企業は投資対象外とするなど、気候変動に伴う金融リスク等に配慮した運用を実施する。

 

  フランスではエネルギー転換法173条(Article 173)で、気候変動関連リスクを情報開示することが義務付けられている。中央銀行も「櫂より始め」で責任投資方針によりそうした情報開示と、資金運用の明確化を打ち出した。

 

 仏中央銀行の内部的運用資産は、200億ユーロ中、約135億ユーロが銀行の年金基金の資産額で、その他は、内部の財務運営上の資産という。中銀は、これまでも内部的に投資対象企業の独自評価プロセスを長年、使ってきた。今回、それらの手法を踏まえて、ESG要因を分析、運用方針へ統合化することを内部的に決定した。

 

 同行担当者は「長年の経験と学術的研究によって、ESG要因は投資のリスクとパフォーマンスに影響を及ぼすことがわかった。これまでも、長期資産の運用者と同時に、金融の安定に貢献する規制当局のミッションとして、フィディシャリー・デューティー(受託者責任)に基づくCSR(企業の社会的責任)戦略に沿った運用をしてきたが、中でも環境リスクが運用上、非常に重要であることがわかってきた」と説明している。

 

 またArticle 173に基づき、情報開示に際して、気候変動関連の要因を投資判断にどう統合しているかを示す特別の財務情報を公表する方向という。同情報には投資に伴う温室効果ガス(GHG)排出量の概要や排出量の減少傾向、投資資産が低炭素経済の構築にどう貢献しているかなどを明記する。

 

 パリ協定で国際合意した「2℃目標」に向けて、仏中央銀行の投資方針と実績が示されることは、TCFDが勧告した気候関連財務情報開示を促進するうえで、企業、金融機関の取り組みを促す大きなベンチマークになる期待がある。また、国連の持続可能な開発目標(SDGs)や国連のグローバル・コンパクトが採用する主要原則を、投資の視点で支援、貢献することも明言している。

 

 また投資に際して、世界人権宣言に基づき、地雷やクラスター爆弾等の製造、取引、輸送等に関する企業を除外するほか、テロ対策に関する各国法を尊重し、さらに国際労働機構(ILO)の原則に沿って、強制労働、児童労働、結社の自由、反差別ルール等を盛り込む。また、グリーンビジネスやエネルギー転換に資する投資行動をとる、としている。

 

 石炭関連企業については、ビジネスの20%以上が石炭関連事業に関連する企業への投資は行わない方針だ。農業関連でも投機的手法を駆使する企業は投資対象外とする。こうした投資活動の全体像については、年次報告で公表していく。

 

 日本では、中央銀行の金融政策の出口論ばかりが注目されている。その足元の年金運用が、どれほど資産はどのような方針で運用されているのか、あまり話題にもならない。だが、中央銀行の責務は金融の安定の持続可能性にあるはず。日銀にも、少し考えてもらいたい。

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