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英大手銀行HSBC、石炭火力発電への新規融資を否定する新「エネルギー方針」公表。北極圏での海底掘削事業への融資も停止。世界中対象。ただし、インドネシアなど3カ国だけ例外(RIEF)

2018-04-23 07:10:10

HSBC1キャプチャ

 

  英大手銀行のHSBCは、 石炭火力発電向け新規融資を行わない新たな「エネルギー方針」を公表した。同行は2011年に途上国を対象に78カ国での新規の石炭火力向け融資の規制を打ち出していたが、今回の改定では、電力需要の確保が必要なインドネシアなど3カ国を例外として、すべての国での融資停止に踏み切る。同時に北極圏での石油・ガスの海底掘削事業などへの融資も停止する。

 

 新規石炭火力向け融資の停止に加えて、北極圏内での海底石油・ガス事業、オイルサンド事業、大規模ダム事業、原子力発電事業等の新規案件についての融資も取りやめにする。ただ、大規模ダムと原子力の規制対象は、「World Commission on Dams Framework」の基準や国際原子力エネルギー機関(IAEA)の基準と一致しないものに限定する。

 

 HSBCは改定されたエネルギー方針において、温室効果ガスの75%がエネルギー分野から排出されており、同セクターでのCO2削減が非常に重要であるとの認識を示した。特に、化石燃料の埋蔵量を消費すると、パリ協定の目標達成のために可能な排出量の4倍ものCO2を排出してしまうと指摘。その多くを開発せず地中に維持する必要性に言及した。

 

 その一方で、現在、石炭が世界の発電の約40%を占めており、経済成長の著しい途上国での電力需要の増大と、エネルギー自給や、貧困対策などの観点も無視できないと指摘。温暖化対策の促進と、途上国のエネルギー需要とを「バランスさせるアプローチ」が必要として、エネルギー需要の高いインドネシア、バングラデシュ、ベトナムの3カ国については、新規融資停止対象の例外にするとした。

 

 HSBCのサステナブルファイナンスのグローバル責任者であり、戦略部門のグループ責任者でもあるDaniel Klier氏は、「今回のエネルギー方針の改定は、HSBCの顧客・企業が低炭素経済への移行を、責任ある形でかつ持続可能な方法で進むよう支援したいHSBCの期待を反映するものだ。パリ協定の目標を実現するためには、CO2排出量を早急に削減する必要があることを認識している」と述べている。

 

 HSBCの新エネルギー方針は、産業界にはおおむね歓迎されている。だが、環境NGOなどからは不満の声が噴出している。国際銀行の環境活動を監視する金融NGOのBankTrackによると、HSBCはベトナムで Long Phu IとVihn Tan 3の2件の新規石炭火力発電事業に融資をする方向だが、両プロジェクトとも、建設に反対する地域コミュニティとの摩擦が続いている。

 

 HSBCはインドネシアでも別の2つの新規石炭火力事業でのファイナンシャル・アドバイザーを務めている。このため、HSBCが主張する「バランス・アプローチ」による3カ国の例外は、実は自社のビジネス維持のため、とみられるためだ。

 

 BankTrackが3月に公表した「Fossil Fuel Report Card」によると、HSBCは2016年から17年にかけて、石炭火力発電事業向けの融資額を一気に79%も膨らませ、融資総額11億2000万㌦(1200億円)に伸ばしている。http://rief-jp.org/ct6/78130?ctid=72

 

 ShageActionのプロジェクト・オフィサーのKatie Kedward氏は「HSBCの今回の方針は、同行の昨年の石炭火力事業への融資をみると、否定すべきではない。しかし、東南アジア諸国を新しいエネルギー方針の例外としたことには失望した。気候政策のリーダーシップとはとても呼べない。従来のビジネスと何ら変わりはない。抜け穴を塞ぐよう求めたい」と強調している。

file:///C:/Users/yfcha/Desktop/180420-hsbc-energy-policy%20(1).pdf