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GPIF、世銀との共同研究「ESG要因を債券投資に統合する報告書」を公表。ESG要因の標準化促進、グリーンボンドのような革新的商品開発の必要性を提言(RIEF)

2018-04-25 14:33:15

GPIF1キャプチャ

 

  年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は世界銀行グループと取り組んできた環境・社会・ガバナンス(ESG)要因を債券投資に組み込むための共同報告書を公表した。それによると、ESG要因を債券投資の運用プロセスに統合することは、投資家にとってリスク管理の強化につながり、より安定した投資リターンに貢献し得ると分析した。さらに、グリーンボンドのようなイノベーティブで持続可能投資を促進する債券商品の開発の必要性を強調している。

 

 GPIFと世銀は昨年10月、持続可能な投資の促進に向けて提携することで合意した。その最初の取り組みとして、債券投資へのESG要素の取り扱いについての共同研究を実施してきた。報告書は先行研究を踏まえ、世界の30以上の主要な投資家やESGデータ提供会社、格付機関等へのインタビューを実施、さらに2018年4月3日に世銀グループとGPIFがワシントンで開いたワークショップでの成果も盛り込んだ。

 

 報告書は、すでに一部の投資家では、ESGを債券リスク分析の一部としてみるだけでなく、ESGと「インパクト」投資を統合させる動きもみられるとしている。その方法としては、例えば、債券などのポートフォリオが環境や社会にもたらすインパクトを測定し、さらに進んで国連の持続可能な開発目標(SDGs)と関連づける手法の採用などを指摘している。

 

 債券投資に際してESG要因を考慮することは、こうした前向きな動きがみられる一方で、ESGの標準的な定義がまだ確立されいないなどの大きな制約があることが、一層の普及を妨げる要因になっている、とも述べている。その中でも、特に「社会」(S)の分野について様々な見解が分かれている点を挙げている。、またSGデータ集積・分析の精度は徐々に高まりつつあるとしながらも、新興国市場を中心にまだ十分ではないとしている。

 

GPIF2キャプチャ

 

 また、債券の発行体(特に国債の発行体である政府)とのエンゲージメント(建設的な対話)の推進は株式の場合に比べて、容易ではないことや、信用格付や債券指数の中でESG要因を位置づける点がまだ不明瞭、ESGに焦点を絞った債券投資商品の不足なども、課題としてあげている。

 

 こうした分析を踏まえ、報告書は、ESGの要素が債券投資に与える影響についてのより一層の研究、投資家が自身の取り組みをカスタマイズする際の原則や基準についてのさらなる検討が必要と提言している。また、グリーンボンドやその他、目的を特定した債券市場では、供給より需要が多いという問題が発生しており、こうした持続可能な投資に対する需要の高まりに見合う、より革新的な投資商品の開発が求められるとしている。

 

 さらに、ESGと債券に関する概念的な分析は、信用リスクにとどまらず、流動性リスクやその他の市場リスクとESGとの関連にまで展開することが望まれる、と付言している。

 

 今後の取り組みとしては、①ESG分析に資する途上国を含むESGデータの集積・改善をさらに進める②ESG要因と債券における財務リスク・リターンの関係をより深く研究する③ESG情報を適用するフレームワーク、標準化の推進④グリーンボンドのようにイノベーティブで持続可能な債券商品をモット開発するーーなどの4点を挙げている。

 

 GPIFの 髙橋則広理事長は「GPIFは昨年10月に投資原則を改定し、すべての資産クラスにおいてESGを考慮することで、被保険者のために中長期的な投資収益の拡大を図ると表明している。今回の共同研究の成果も踏まえ、GPIFは債券投資におけるESGの考慮について、引き続き取り組みを検討していく。今回の研究成果が、他の機関投資家や研究機関などに広く活用されることを願っている」と述べている。

 

 ジム・ヨン・キム世銀総裁は「SDGsの達成には年間約4兆㌦が必要とされる。政府の政府開発援助(ODA)だけでは毎年1400億㌦でしかなく、目標達成には、民間セクター、特に機関投資家の力がぜひとも必要。GPIFは独自の戦略で、ESGを投資活動へ織り込む道を切り開いており、民間セクターによる途上国への投資を模索する我々の大変重要なパートナーだ」と指摘している。

http://www.gpif.go.jp/operation/pdf/300420_joint_research_report.pdf

http://www.gpif.go.jp/operation/pdf/300420_joint_research_report_en.pdf