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米大手銀のウェルズファーゴと、モルガンスタンレー、相次いで2030年のサステナブルファイナンス目標額を設定。それぞれ2000億㌦、2500億㌦と大幅な目標額を設定(RIEF)

2018-04-28 22:26:09

Wellsfargoキャプチャ

 

  主要米銀が相次いでグリーンファイナンスの目標を上積みした。ウェルズファーゴはサステナブルビジネス・プロジェクトに2030年までに2000億㌦(約21兆8000億円)を投じると宣言、モルガンスタンレーも同じく低炭素関連事業へ2500億㌦(約27兆2500億円)にすると発表した。ウェルズファーゴは投融資ポートフォリオのカーボン度合いの透明性を高めるため、気候財務情報タスクフォース(TCFD)勧告等に沿う開示や、国連の持続可能開発目標(SDGs)への貢献も盛り込んだ。

 

  これまでウェルズファーゴは、2012年にサステナブルファイナンスの目標として、2020年までに300億㌦を同分野に投じる計画を立てていた。しかし、パリ協定の締結を前後して、米国内外で再生可能エネルギー事業等の資金需要が増加、目標を5年前倒しして2015年に達成した。その後、17年は1年間で120億㌦を再エネ事業等に融資している。

 

 こうしたことから、同行はサステナブルファイナンス市場の規模が今後も確実に拡大すると判断、2030年の目標額を2020年より6.6倍増の2000億㌦に設定した。2000億㌦のうち半分以上は、低炭素経済への移行に直接つながるクリーンエネルギーや再エネ取引分野のグリーンボンド等へ振り向ける。残りは持続可能な農業、リサイクリング、自然保護等の環境にプラスになる活動に充当される。

 

 融資額を増やすだけでなく、資金の供給先を同行の投資家にも見えやすくする透明性も向上させる。TCFDの勧告に沿った情報開示の透明性を高め、定期的に融資による社会的、環境的、経済的インパクトを報告するとしている。また気候変動関連への資金供給のみならず、SDGsの目標達成に貢献すると宣言した。

 

MS1キャプチャ

 

 一方、モルガンスタンレーは、これまで2006年以来、総額840億㌦をクリーン技術開発や再生可能エネルギー分野に融資してきた。グリーンボンドなどの引受額も自行の発行分を含めて270億㌦に達している。こうした実績を踏まえて同行は、2030年の投融資目標額をこれまでの実績の2.5倍の2500億㌦に引き上げた。

 

 同行では、2015年~2030年の間に、グローバルベースで総額90兆㌦のインフラの新設・更新需要が発生、それらをグリーン化する必要性が高まることから、銀行としてもサステナブルファイナンスの供給力を強化する必要があると判断している。2500億㌦はサステナブルファイナンス融資と、グリーンボンドの引受け分等を合わせた目標となる。

 

 ウェルズファーゴのCEO、Tim Sloan氏は「われわれは、低炭素経済への移行と、環境面の持続可能性を、自らの商品・サービス、営業活動、そして社会的貢献を通じて、促進するリーダーとしての役割を果たすことを市場に約束する。公約実現のため、明確な目標の設定と、責任あるサステナブルファイナンスを金融界全体で幅広く普及させるため、透明性の向上と情報開示の実践を進める」と述べている。

 

 モルガンスタンレーの最高サステナブル責任者(CSO)であり最高マーケティング責任者(CMO)を兼務するAudrey Choi氏は「今回の目標設定は、モルガンスタンレーが、市場・顧客に対して低炭素ソリューションのための魅力的な機会を提供してきたこれまでの継続的な取り組みを反映したものである」と説明している。

 

 大手米銀の相次ぐサステナブルファイナンス拡大方針に、米環境NGOであるCeresのCEO・代表のMindy Lubber氏は「ウェルズファーゴなどの新たな目標設定は重要だ。金融セクターがクリーンエネルギー投資に数千億㌦を投じるとともに、気候関連リスクとオポチュニティの情報開示の透明性を高めることにつながる」と評価している。

 

 サステナブルファイナンス分野は、これまでのコーポレートローンの需要に加えて、再エネや省エネなどの新たな事業資金の借り入れ需要を生み出す。これらのグリーン資金需要はグローバルに拡大しつつあり、米銀大手はこの市場の主導権を目指してすでに走り出したといえる。サステナブルファイナンス分野は、銀行にとって投融資先であるだけでなく、自らもグリーンボンド等の発行・引き受け業務とも連動するため、市場のつながりと広がりを持つ大手銀行に有利な市場との見方も出ている。

 

 一方、日本の3メガバンクや、損保、生保等も、国内市場では再エネ中心にそれなりの資金供給を行っている。だが、アジアをはじめとする国際的なサステナブルファイナンス市場への進出では大きく出遅れている。むしろ、3メガバンクを中心に、石炭火力発電事業など旧来の化石燃料ファイナンスから脱し切れていない。このままでは、サステナブルファイナンスのグローバル市場での主導権を早期に喪失するリスクもある。

 

https://www.morganstanley.com/press-releases/morgan-stanley-announces-new-commitment-to-finance–250bn-in-low

https://newsroom.wf.com/press-release/corporate-and-financial/wells-fargo-announces-200-billion-sustainable-financing