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米投資情報大手モーニングスター、投資ファンドのポートフォリオを対象とした「カーボンリスク格付」開始。サステナリティクスのデータを踏まえ。TCFD勧告に沿う投資家行動に対応(RIEF)

2018-05-03 23:39:47

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   米投資情報大手のモーニングスター(Morningstar)は、投資ファンドのポートフォリオが抱えるカーボンリスクを評価・スコアリングする「カーボンリスク格付(Portfolio Carbon Risk Score)」を開始する。連携するESG評価会社のサステナリティクス(Sustainalytics)のカーボンデータを活用し、同社がグローバルにカバーする約3万のファンドの構成企業を評価にする。低カーボンリスク、低化石燃料保有の投資ポートフォリオのファンドには「グリーンバッジ」を付与する。

 

 モーニングスターのサステナビリティ・リサーチ部門の責任者であるJon Hale氏は「グローバルな先進国市場と新興国市場の投資ポートフォリオにおいては、カーボンリスクは大きな変更を伴わなくても現状より10%の削減は可能。先進国市場のポートフォリオのカーボンリスクを30%削減できれば、さらなる成長と投資品質の向上が見込める。新興国市場の場合は市場のボラティリティを下げる期待がある」と述べている。

 

 モーニングスターは2016年に、同じくサステナリティクスのデータに基づいてファンドをESG格付する「モーニングスター・ファンド・サステナビリティ格付けTM」のサービスを実施している。今回の新格付はカーボンリスクに絞り込んだ形だ。モーニングスターは昨年7月、サステナリティクスの株40%を保有し、関係を強めている。

 

 投資ファンドのポートフォリオが抱えるカーボンリスクの評価・スコアリングには、サステナリティクスのカーボン評価データに基づく新たな「Portfolio Carbon Metrics」を活用する。パリ協定の2℃目標を達成するために、各国政府が取り組む規制強化や消費者の選択などの移行リスク、あるいは気候変動の激化による物理的インパクトなどの影響が、ファンドのポートフォリオ構成銘柄にどのように及ぶかを評価する。

 

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 企業のカーボンリスクについては、これまでもカーボンフットプリントの評価手法がある。フットプリントは企業が潜在的に抱えるカーボンリスクの理解には役立つが、企業がそれらのリスクに対処する上での金融面でのマテリアリティ(重要性)への対応などは踏まえていない。モーニングスターの「Portfolio Carbon Risk Score」は、企業のマテリアルなカーボンリスクを、よりも深く把握できるという。

 

 評価に際しては、企業が低炭素経済への移行に伴い直面する移行リスクや法的リスク等を、70のカーボン指標で評価する。たとえば、排出する温室効果ガスのクレジット価格の上昇、規制の増加や情報開示要求への対応などの移行リスク評価に加えて、低カーボン商品へのシフト、既存商品の入れ替えなどの技術的リスク、消費者の選好の変化、原材料の増大などの市場リスク、消費者の評判リスク、気候変動の影響を受けるイベントリスクや海面上昇のリスクなどの物理リスクなどの評価指標が入っている。

 

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 サステナリティクスのスコアデータは、企業が抱えるカーボンリスクを抑制する対策を取った後に残る”制御不可能なカーボンリスク”に対してスコアをつける形となる。このスコアが低ければ低いほど、カーボンリスクは低いことになる。モーニングスターは、こうしたサステナリティクスの評価を踏まえてさらに投資構成比率を加味してスコア化する。

 

 サステナリティリクスのCEO、Michael Jantzi氏は「投資家は、TCFDの勧告が公表されて以来、投資先のカーボンリスクをより理解したいと思っている。カーボンリスクのスコア評価は、投資家の投資判断をサポートし、カーボン投資商品の発展につながるだろう。特に、投資家が投資先企業とのエンゲージメント(対話)の際にも重要性を増す」と指摘している。

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