ペルーのリマ証券取引所、英政府支援でグリーンボンド・ガイド公表。途上国市場も最初から国際基準土台で。第三者評価も義務付け。日本のガイドラインの「後進性」顕著に（RIEF）
2018-05-10 22:51:51
英政府はペルーのリマ証券取引所（BVL）を支援し、同国でのグリーンボンド市場を育成支援するための「グリーンボンドガイド」を公表した。英政府はすでにメキシコで同様に証券取引所を支援してグリーンボンド市場づくりに成功しており、第二弾としてペルー版グリーンボンドの発行支援を展開する方針だ。
グリーンボンド市場は世界的に拡大を続けている。現在、多くのグリーンボンドは市場基準として知られる「グリーンボンド原則（GBP）」に準拠する例が増えている。しかし、中には「GBP準拠」をうたい文句にしながら、実際はGBPより緩い条件でのボンド発行を認める国（日本の環境省ガイドラインが典型例）のような「薄いグリーンボンド」基準もある。
こうしたルールの不明確化が広がらないようにするため、国際標準化機構（ISO）が国際基準化作業を進めているが、英政府は、二国間ベースで、途上国の証券市場での国際ルールに沿ったグリーンボンド発行市場の整備を進めている。英政府は、今回のペルー向けのグリーンボンドガイドについて「グリーンボンドを発行するために守らなければならない（must） 基本原則を定め、国際的なベストプラクティスを盛り込んだ」と説明している。
英国はこれまでも2016年にメキシコの証券取引所Bolsa Mexicana de Valores Groupsummarise（BMV）の環境関連市場のMEXICO2へのグリーンボンド上場のルール化を支援している。今回のペルー市場への協力支援もメキシコと同様の方針に基づく。メキシコでは現在、国際規格に沿ったグリーンボンドの発行が相次いでいる。
途上国で国際ルールを厳格に準拠するグリーンボンドの発行ができると、先進国の年金等の機関投資家にとっても投資対象となる。グリーンボンドは昨年だけで1608億㌦（CBI調べ）が発行されている。だが、欧米の機関投資家の間に、ESG投資重視の流れが高まっており、そうした需要の増大に比して、適合する適格グリーンボンドの供給量がまだ少ないという問題が生じている。
ただ、その場合でも、日本の環境省のように、国内事情だけを強調したガイドラインや、中国の国内グリーンボンドのように、石炭火力発電向けの資金調達も「グリーン」に含めるようなボンドでは、国際的な投資家の投資対象にはならない。英国は、途上国市場でも適格グリーンボンドの発行を増やそうと、国際基準に適合したグリーンボンド発行ルールの整備を支援している。
英国にとって、そうした国際規格のグリーンボンド発行が途上国でも増えると、英系金融機関の販売主幹事業務やファイナンシャルアドバイザリー業務などが拡大、国際金融街のロンドン・シティでの取引の厚みを増すことにもつながるメリットがある。
ペルー版の発行ルール化に際して、英国はGBP等の先進国ルールをそのまま押し付けるわけではない。先行して市場づくりに成功したメキシコのBMVのMEXICO2が自らのガイドを発展させ、ペルーのBVLと共同で作り上げた。原則を順守したうえで、英国はそうした作業を人的供給も含めて資金支援した。
BVLのガイドは、GBPと同様に、資金使途や情報開示など4原則をminimum standardsとして発行体に順守を求めている。またグリーボンドの資金使途先となるすべての投資事業についての透明性の保証と、ボンド発行体の報告内容については、すべて第三者による外部評価を条件としている。これらの点も、日本の「薄いグリーン」のガイドラインには盛り込まれていない。
ペルー政府は今年中に500MW～1GW規模の再生可能エネルギー事業を入札方式で実施する計画を公表している。今回のグリーンボンドガイドはその資金調達を国際基準に沿ったグリーンボンドの発行でまかなおうという狙いがあるようだ。
ペルー版のガイドの特徴は、GBPのminimum standardsへの準拠は当然として、さらに第三者評価の付与を重視している点だ。「グリーンウォッシュボンド」を掴まないためにも、投資家は第三者による客観的評価によって「グリーン性」を担保したいためだ。
https://www.gov.uk/government/news/uk-supports-launch-of-green-bonds-market-in-peru
Research Institute for Environmental Finance