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世界銀行など国際開発金融機関の気候関連投資ポートフォリオ、パリ協定との整合性不十分。化石燃料関連融資も依然、多額を占める。英気候シンクタンクが評価・分析(RIEF)

2018-05-11 00:16:47

MDBsキャプチャ

 

  パリ協定を実現するための気候関連ファイナンスの先導役として期待される世界銀行などの6つの国際開発金融機関(MDBs)の気候関連投資ポートフォリオは、パリ協定の「1.5~2°C目標」と整合性がとれていないことがわかった。6機関中、4機関が、再エネ等の気候ファイナンスと化石燃料関連ファイナンス額がほぼ同額であることもわかった。

 

 (写真は、国際開発銀行の支援で建設が進むウクライナのガスパイプライン計画)

 

 英気候シンクタンクのE3Gが「BANKING ON REFORM. Aligning Development Banks with the Paris Climate Agreement」と題する報告書で分析した。対象は、世銀グループのほか、米州開発銀行(IDB)、欧州投資銀行(EIB)、欧州復興開発銀行(EBRD)、アジア開発銀行(ADB)、アフリカ開発銀行(AfDB)の6機関。いずれも昨年12月にパリ協定に沿った資金供給を宣言している。

 

 グローバル社会は今後2035年までに90兆㌦(約9800兆円)にのぼるインフラ投資需要が予想され、その中に気候変動対策をどれだけ盛り込めるかが課題だ。MDBsは民間資金をこれらの分野に誘導するための仲介役として期待される。E3Gはこうした6つのMDBsの投資ポートフォリオを分析、スコア評価した。

 

E3G2キャプチャ

 

  6機関合計での現在の気候関連ファイナンス額は年間270億㌦(約3兆円。2016年時点)に達している。しかし、6機関の2020年までの気候ファイナンス確約額は全体の投融資額の5割に達しておらず、世銀やADBなどは30%前後にとどまっている。

 

 またMDGsの中には、いまだに化石燃料事業に投資を続けているところが少なくない。E3Gは4つの主要分野(ガバナンス、戦略、リスク&運営マネジメント、転換のためのイニシアティブ)を対象に16項目の評価基準を使って、各金融機関をスコア化しランキングを作成した。

 

 その結果、IDBが23点で、もっとも高スコアとなった。次いでEIB(22点)、世銀(21点)、ADB(20点)、AfDB(17点)、EBRD(15点)となった。ただ、E3Gは、どのMDBsもパリ協定の目標に適合するファイナンスを提供できておらず、体制の整備も課題だと指摘している。

 

e3G3キャプチャ

 

 スコアで1位になったIDBは、途上国政府に対して、特にパリ協定と整合性のある技術支援等でリード役を果たしていると評価された。同様に、EIBと世銀グループもそのパフォーマンスを評価された。

 

 16項目の評価項目のうち、特にエネルギーファイナンスにおいて、6機関の取り組みの違いが浮き彫りになった。再エネ等の気候関連ファイナンスと、化石燃料ファイナンスへの融資額(ドルベース)を比較すると、IDBは、13.9対1で圧倒的に気候関連ファイナンスが多い。しかし、世銀(1.2対1)、EBRD(同)、EIB(1対1)、ADBは0.9対1で、再エネ等の気候ファイナンスと、化石燃料関連向け融資とがほぼ同水準のところが4機関もある。AfDBは5.3対1で気候ファイナンスが多い。

 

E3G1キャプチャ

 

 E3Gは、MDGsが気候ファイナンスのリード役としての役割を的確に果たすため、各MDBsに対して、お互いの活動のベストプラクティス事例を共有して学び合うこと、データの共有化、パリ協定に適合するファイナンス状況をとりまとめ、自ら報告する透明性の向上などを求めている。

 

 報告をまとめたE3Gのシニア政策アドバイザーのHelena Wright氏は「MDBsはそろってクリーンエネルギー投資を増やしてはいる。しかし、彼らはそろってダーティ・エネルギー(化石燃料)にもいまだに多額の資金を供給している。限られた公的資金は、化石燃料関連への投資から、気候変動による最悪の事態を避けるための投資へ緊急にシフトさせる必要がある」と指摘している。

https://www.e3g.org/docs/E3G_-_Banking_on_Reform_Report_-_Final.pdf