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英大手保険Aviva 石炭関連企業向け投資・保険引き受けで「手ぬるいエンゲージメント手法」を国際NGOに批判される(RIEF)

2018-05-12 17:13:53

Aviva2キャプチャ

 

  欧州の主要保険会社が、石炭等の化石燃料関連企業向け投資の引き揚げ(Divestment)と、保険引き受け停止に向かう中で、英大手保険のAvivaがNGOの批判を受けている。Avivaは投資引き揚げではなく、当該企業へのエンゲージメント(対話)重視の姿勢だが、NGOは「手ぬるい」と指摘している。エンゲージメント活動をESG投資と評価する日本の多くの資産運用会社の姿勢も国際的に通用するのか、という疑問も出てきた。

 

 Avivaへの圧力を強めているのは国際的に脱石炭運動を展開している各国NGOで構成する「The Unfriend Coal network(UCN)」。Avivaの会長Sir Adrian Montague氏は先ごろの株主総会で「石炭は市場の大きな失敗。保険会社として行動が必要」としながら、同社としては、石炭関連産業の投資を引き揚げる措置の代わりに、当該企業に事業見直しを求めるエンゲージメント活動を中心とする姿勢を強調した。

 

 UCNの調査によると、同社の投資ポートフォリオには282の新規石炭発電所開発企業と、700以上の石炭・タールサンド関連事業を展開する企業が含まれれるという。Avivaのエンゲージメント路線は、投資先の事業転換を株主として勧め、それがダメだったらDivestmentも辞さず、という二段階戦略としている。

 

 これに対して、UCNは、「DivestmentとEngagementは二者択一ではなく、両方とも推進すべき手法」と指摘。同社が抱える膨大な化石燃料関連投資を踏まえると、エンゲージメントでそれらの企業の事業転換を明確に促すのは困難、との見方を示している。特にタールサンド産業については、「今や、EngagementかDivestmentのどちらでもなく、即刻投資を停止すべき事態に至っている」と強調している。

 

UCNが世界25の大手保険会社の石炭関連企業向け対応を3分野で評価。日本は東京海上ホールディングス
UCNが世界25の大手保険会社の石炭関連企業向け対応を3分野で評価。日本は東京海上ホールディングス

 

 Avivaが投資引き揚げを一切していないわけではない。同社は2015年に収入の30%以上が石炭火力関連事業となる企業が投資先に40社以上あることを公表。17年9月にはその中から石炭関連比率の高い日本の電源開発(Jパワー)とポーランドのPGEについては保有株を手放している。

 

 ただUCNは、これまでAvivaがDivestmentしたのは、件数で15社強、投資金額にして1100万ポンド(約1400万㌦=16億2400万円)と推計。同社が新規石炭火力やタールサンド開発に投じている9億2000万ポンド(約1360億円)以上に比べると、極めて少額で、「世界の気温上昇を2°C以下に抑制するというパリ協定の目標達成に向けた取り組みとしては、baby step(赤ちゃんの歩みのようなもの)に過ぎない」と酷評している。

 

 またAvivaのポーランドにある年金基金のOFEは、ポーランドでNGOの批判を浴びている複数の石炭企業に対する投資額を、2015年の2億7200万ポンドから17年には、投資引き揚げどころか、逆に3億7100万ポンドへと36%も投資上積みをしている。Avivaはインドの国営火力発電公社(NTPC)が計画する総量38GWの新規石炭火力発電計画にも1900万ポンドを投じ、カナダでもタールサンド企業群に4億6900万ポンドを投じている。

 

 UCNの欧州コーディネーターのLucie Pinson氏は「AvivaのDivestment総額は、石炭・タールサンド企業への膨大な金融支援に照らすと、本当に微々たるもの。こうした対応は危険な状況にある気候変動に対する闘いを阻害するばかりだ。Avivaはパリ協定へのコミットメントを打ち出しているのに、こうした対応で終始するのは極めて不可思議だ」と批判している。http://rief-jp.org/ct6/79172

 

 エンゲージメント優先の政策への批判に対して、AvivaグループのAviva Investment の最高責任投資役員(CRIO)であるSteve Waygood氏は「エンゲージメントは、変化を促すうえで、よりパワフルなツールになる」と反論している。実際にも、イタリアのエネルギー企業Enelへのエンゲージメントで、同社が2016年に中国に石炭火力発電を建設した後、5年間の同社の投資増加分180億ポンドの半分を太陽光や風力発電に切り替えさせることに成功した、と強調している。

 

 しかし、UCNは「Avivaのエンゲージメント活動は、本来的に透明性を欠いている。投資家はもっと投資活動の詳細を知りたがっている」と指摘する。投資先企業にはパリ協定との整合性を欠く石炭火力発電等を推進するところが依然多い。主要投資家であり保険引き受け業務を展開するAvivaは、そうした投資対象から自動的に身を引くべきだ」と求めている。

 

 今回のように気候変動対策に取り組む責任投資の姿勢として、エンゲージメントかDivestmentか、という選択肢の提示が問われてきた。だが、UCNが今回、保険会社に対して「両者は選択肢ではなく、両方実施すべき」と明確に求めるとともに、エンゲージメントの効力に疑問を投げかけたことは、日本の資産運用市場にも通じる論点を衝いたものといえる。

 

 日本のESG投資ブームの多くは、資産運用会社による投資先へのESG要因のエンゲージメントを中心とした活動を指している。Divestmentは極めて限られている。また、実際にそれらのエンゲージメントが企業の事業転換、ESG評価の向上につながったかどうかの検証と情報開示も十分ではない、とされている。

 

https://unfriendcoal.com/2018/05/11/aviva-agm-analysis/