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気候変動リスクの財務情報化を求めるTCFD勧告への準備状況。英金融機関の年金では、HSBC、バークレイズが先行、Aviva、ロイズ銀行は出遅れ。英議会環境監査委員会の調査で判明(RIEF)

2018-05-29 21:30:14

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 英議会の環境監査委員会(EAC)は、25の主要年金基金を対象に、気候変動関連の財務情報開示を求めるTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)勧告への対応状況を調べ、公表した。この中で、保険のAviva、ロイズ銀行、HBOSの3金融機関の年金基金が他よりも対応が遅れが顕著だったのに対して、HSBC、バークレイズ、BBCなど12の年金は先行しているとの結果が出た。

 

 英国は中央銀行のイングランド銀行のマーク・カーニー総裁がTCFDを組織した金融安定理事会(FSB)議長でもあることから、TCFD勧告の普及に力を入れている。与野党で構成する英議会のEACは3月、全体で5550億ポンドの資産を運用する25の大手年金基金の気候変リスクにどう対応しているかを問う質問状を送付してきた。

 

 その結果、他の年金に比べて「less engaged(不十分な対応)」と認識されたのは、Avivaなどの3金融機関と、自動車のフォード、電力、エネルギーのBPの各年金基金。一方、「more engaged(よくやっている)」と評価されたのは、HSBC、バークレイズ、BBCなど、大学退職者基金(Universities Superannuation Scheme)、ロンドン市の年金基金等の12年金基金。

 

  一方で、英議会の年金基金自体、TCFD対応が全く準備が出来ていないという実態もある。英議会年金は7億3000万ポンドの資産を抱えている。

 

 EACの議長を務めるMary Creagh議員(労働党)は、「英国の年金基金の大半は、気候変動が抱える年金投資資産に及ぶリスクを制御する方向に向けて着実にステップを踏んでいることが明らかになった。ただ、一部の年金は、十分ではないようにみえる。年金基金は少なくとも、受給者の受給期間に応じた投資資金が、気候変動による物理リスクや移行リスク、訴訟リスクに対する影響を評価するべきだ」と述べている。

 

 議会が主導して年金の気候変動対応を調べるという英国の取り組みは、日本の国会にも期待したいところだ。政府に丸投げするだけでなく、議会の調査権限で対応可能だろう。