シンガポール金融管理局(MAS)、シンガポールをサステナブルファイナンスのアジアのハブ化目指し、国際金融公社(IFC)と覚書、WWFのマルチステークホルダー活動も支援(RIEF)
2018-06-11 08:04:59
シンガポール金融管理局(MAS)は、アジアでのサステナブルファイナンス市場のハブ化で競う香港を意識し、新たなイニシアティブを相次いで打ち出した。国際金融公社(IFC)との間で、アジアでのグリーンボンド市場促進の覚書(MOU)を結んだほか、環境NGOのWWFが新たに立ち上げたマルチステークホルダーによる「Asia Sustainable Finance Initiative(ASFI)」への支援も表明した。
MASは先週、シンガポールで開いたGreen Finance Conferenceで、これらのイニシアティブを公表した。アジアでは今週、香港でグリーンボンド原則(GBP)のアジア初の年次総会が予定されている。香港政庁だけでなく、中国も多くの参加者を送り込むなど、香港をサステナブルファイナンスの国際ハブ市場としてアピールすることを狙っている。
これに対して、シンガポールも、昨年11月には、東南アジア(ASEAN)諸国による初のグリーンボンド基準(ASEAN GBS)の制定を主導したほか、同国証券取引所(SGX)では、グリーンボンド上場を促進する政策を展開している。
新たに結んだIFCとの覚書では、グリーンボンドの発行や途上国でのグリーン事業ファイナンスで実績のあるIFCと連携することで、アジアでの金融機関によるグリーンボンド発行の促進を目指す。覚書ではまず、アジアの金融機関のグリーンファイナンス分野に関するキャパシティビルディング(能力アップ)プログラムを通じた専門的意識と知識の向上を図り、さらに、国際的に認知されたグリーンボンド基準とフレームワークの使用を促進する、としている。
IFC側もMASとの連携を高く評価している。IFC東アジア・太平洋担当局長のVivek Pathak氏は「気候変動問題に対処するには、民間セクターを活用する、革新的で、高い影響力のある金融的解決策が必要になる。今回のMASとの協力強化で、アジアの金融機関がグリーンボンド発行の重要性への認識を深め、各国金融当局や銀行の能力増強を進めることを期待している 」と述べている。
一方のWWFが展開するマルチステークホルダーのASFI は、アジアの各地域で気候変動対策を展開するため、各国政府、市民社会、産業界、学界等のマルチステークホルダーの協働によって、サステナブルファイナンスのベストプラクティスを開発、普及させることを目指すものだ。
ASFI はまず、サステナブルファイナンスに関する研究情報やツール、ベストプラクティスなどをオンラインで提供することを始める。さらに、アジア全域でのサステナブルファイナンスでのキャパシティビルディングも進める。ASFIにはアジアの金融機関も参加しており、地域にふさわしい基準の開発等に取り組む。
WWFのサステナブルファイナンスのアジア担当の Jeanne Stampe氏は、「金融資金の流れをサステナブルビジネスに向かわせる条件を整えることによって、シンガポール市場はより強靭に、より競争力を高めるだろう」と指摘している。
シンガポールの資産運用市場は、資金の78%を海外から導入し、66%をアジア・太平洋地域に投資するというユニークな役割を果たしている。銀行も同様にアジア市場を前提とした広範囲な取り組みを展開しており、サステナブルファイナンスの普及拡大にも、そうした仲介機能の活用が期待される。
MASのDevelopment & International GroupのNg Yao Loong氏は、「アジアは毎年、グローバルなグリーンボンド発行市場の4分の1を占めている。IFCとパートナーを組むことで、さらにアジアのグリーンボンド市場を発展させることができる。MAS Green Bond Grant Scheme等を通じて、市場拡大に貢献したい」と語っている。
アジアでのサステナブルファイナンス市場のハブセンターの座を目指して、すでに競争は加速しつつある。グローバルなプレイヤー、機構等をどうネットワーク化するかが一つのカギでもある。だが、日本市場ではこうした動きはあまり見られない。東京はここでも、後れを取るのか。