英金融サービス大手のリーガル＆ジェネラルグループの投資部門LGIM。日本郵政、SUBARUを含むグローバル企業8社を気候変動対応不足を理由に、Divestment（投資引き揚げ）実施（RIEF）
2018-06-16 23:32:32
欧州2位の投資ファンド、英リーガル・アンド・ジェネラル・インベストメント・マネジメント（LGIM）は、日本の日本郵政、SUBARU（旧富士重工業）を含むグローバル企業8社について、気候変動への対応が不十分として、全保有株を売却した。LGIMは各企業の株主総会で議長再任の議案に反対する意思表示をした後、売却を決めた。
ESG投資で企業経営へのエンゲージメント（関与）を重視する資産運用が増えているが、日本では、その多くが経営側への質問、株主総会での議案への反対票を投じる活動にとどまっている。LGIMは企業の温暖化対策を自社基準に基づいて評価したうえで、経営の対応変更を要請、対応不十分な場合は、投資を引き上げることで、資産運用ビジネスの「責任」を明確にした形だ。
LGIMは2016年11月に、パリ協定に基づいた気候変動対策、低炭素経済への移行対応に取り組む企業の状況を50項目以上の指標で評価する「Climate Impact Pledge」を導入、84社のグローバル企業を対象としてその対応状況を評価してきた。
そうした評価に基づき、2017年4月から18年4月の1年間、各企業にエンゲージメント活動を展開した。LGIMの質問状に対して対象企業の4分の3（74%）は回答したほか、61%の企業はLGIMと会合を持った。LGIMは、これらの直接のエンゲージメント活動によって、トヨタ、ウェルズファーゴ、豪コモンウェルスバンクなどは、ポジティブな改善がみられたと評価している。
これに対して、以下の8社は、対応やスコアが不十分として、投資対象から除外した。
- China Construction Bank（中国建設銀行：中国）
- Rosneft Oil（ロスネフチ：ロシア）
- Japan Post Holdings（日本郵政：日本）
- Occidental Petroleum（オキシデンタル・ペトロリアム：米国）
- Dominion Energy（ドミニオン・エネルギー：米国）
- SUBARU（SUBARU：日本）
- Loblaw（ロブロウ：カナダ）
- Sysco Corporation（シスココーポレーション：米国）
このうち、中国建設銀行やロシア国営石油大手ロスネフチからは、質問状への回答がなかった。オキシデンタルは温室効果ガスの総排出量の報告計画がなく、日本郵便とロブロウは環境情報の開示内容が乏しいと判断された。SUBARU、ドミニオン、中国建設銀行はLGIMの複数のカテゴリーでスコアが悪かった。米食品大手シスコ・コーポレーションの気候変動政策は不十分と評価された。
こうした結果を受けて、LGIMは気候変動リスクを考慮したグローバル株式インデックスファンド「Future World Fund」、同ファンドの投資信託商品「L&G Future World Equity Factors Index Fund」から、これら8銘柄を除外、保有株を売却した。
またLGIMの2017年4月以降のエンゲージメント活動の結果、多くの米企業のスコアは改善、日本、オーストラリア、韓国の企業の平均値も改善した。一方、欧州の仏、英、独の各企業には、目立った改善はみられなかったとしている。
LGIMの持続可能責任投資戦略部門の責任者、メリアム・オーミ氏は「気候変動は社会にも投資家にも重要な課題。我々の役割は多様な産業分野の企業が低炭素経済への移行を成功できるようにすることにある。Divestment（投資引き揚げ）は結果であり、（われわれの）目的ではない。低炭素経済への移行は可能であり、投資先企業とともにそれを実現したいと考えている」と述べている。
LGIMは（指数連動型の）パッシブファンドでよく知られる。全運用資産総額は9833億ポンド（約145兆円：昨年12月末）で、日本の公的年金の年金積立金管理運用独立行政法人（GPIF）が保有する162兆円（18年4月末）の資産規模に迫る。
Research Institute for Environmental Finance