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ルクセンブルグ証券取引所 中国の国内版グリーンボンドへの欧米投資家のアクセス向上のため、上海証券取引所と連携「グリーンボンド・チャネル」開設。英文情報の充実図る(RIEF)

2018-07-03 07:33:05

LuxSEキャプチャ

 

  ルクセンブルグ証券取引所(LuxSE)は中国の上海証券取引所(SSE)と連携し、中国の国内グリーンボンドへの欧米投資家の投資機会を高める「グリーンボンド・チャネル」の開設で合意した。LuxSEは3月にも上海清算所(SCH)と中国国内発行ボンドへの海外の機関投資家の投資を円滑にするための覚書を結んでいる。中国国内版グリーンボンドへの投資機会を欧米投資家に拡大することで、中国でのグリーンプロジェクトの一層の推進を目指す。

 

 中国は9兆㌦規模という世界でも最大規模の一つである国内債券市場を保有する。そのうち2016年に発行が解禁されたグリーンボンド市場は、2500億人民元(約4兆1250億円)と急拡大中だが、債券市場全体に占める比率はまだまだ小さい。

 

 特に国内発行のグリーンボンドについては、資金使途先の英文情報が不十分であるほか、セカンドオピニオン業者による確認にも十分な信頼感が得られない状況にある。このため、欧米投資家からの投資が限られ、中国国内のグリーンプロジェクトに十分な資金が流れない懸念も出ている。

 

 一方の欧米投資家のほうにも事情がある。気候変動対策への社会的期待等を受け、年金基金等はESG投資比率を高める動きを強めている。しかし、グローバルなグリーンボンド市場は急成長しているとはいえ、旺盛な機関投資家の投資需要に見合う市場規模にはなく、また投資適格ボンドの供給も十分ではない。このため、優良発行体のボンドには、数倍もの応募超過が常時発生することが再三起きている。

 

 グリーンボンド市場の需給両面の課題を受け、LuxSEは、市場の潜在規模が大きい中国国内の上場グリーンボンドを、欧米投資家向けに「投資適格」の判断ができるよう情報面の整備を進めることにした。グリーンボンドは日本や東南アジアなどでも徐々に発行例が増えているが、欧米の機関投資家にとっては、相対的に発行量が多く、将来のさらなる市場拡大が期待される中国の国内グリーンボンドへの需要待が潜在的に高いとみられている。

 

 中国の国内ボンドは、英語の情報が少なく、欧米機関投資家にとって投資資金の使途先の情報確認に不安がある。実際に、中国人民銀行などが発行する国内版グリーンボンドガイドラインでは、ボンドの資金使途に、高効率の石炭火力発電や石炭燃料のセメント・化学工場なども認めている。

 

 しかし、欧米の機関投資家等は化石燃料事業への投資は増やすどころが削減している。また仮に投資した中国版グリーンボンドへ投資した後、投資ポートフォリオのCO2排出量が増えるようだと、年金受給者やNGOなどから批判を受けるリスクも伴う。これまでの中国国内でのグリーンボンドでは、そうしたリスクを判断する詳細な英文情報が得られず、また、セカンド・オピニオンでも十分な確認ができない、ことなどが投資の障害となっていた。

 

  今回のLuxSEはSSEとの協調は、「情報ギャップ」を埋めることで、そうした投資家の不安を取り除くことを最大の目的としている。中国の国内市場に上場されるグリーンボンドについて英文情報を整備し、欧米投資家が安心して利用できるようにするのが最大の目的だ。

 

 LuSEのCEOであるRobert Scharfe氏は「『グリーンボンド・チャネル』は情報ギャップを埋め合わせるブリッジになることを目指す。中国と欧州の間の投資チャネルを高めることに重点を置く」と今回のパートナーシップの意義を強調する。

 

 LuxSEは3月には、上海清算所と協定することで、中国のインターバンク市場での取引グリーンボンドについての英文情報を強化する活動を展開している。その結果、中国農業発展銀行(ADBC)発行の国内グリーンボンドへの欧米投資家の投資が促進された経緯がある。http://rief-jp.org/ct6/78214?ctid=75

 

 http://www.luxembourgforfinance.com/en/news/luxembourg-and-shanghai-exchanges-connect-issuers-and-international-investors-through-new-green