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スイス再保険、今週から石炭関連事業が「30%以上」の企業からの保険・再保険引き受けを停止。投資だけでなく本業の保険契約を通じて、企業に脱炭素化を促す(RIEF)

2018-07-03 23:29:41

swissre2キャプチャ

 

  スイス再保険は2日から、石炭関連の事業が30 %以上を占める企業への保険および再保険の提供を停止した。同社は昨年6月に、石炭産業向けの保険見直しを宣言しており、その実践に踏み切った。企業にとって事業継続に大きな役割を果たす保険を提供しないことで、対象企業が温暖化を加速する事業からの撤退を促す方針。

 

 今回の「石炭方針」の実施は、新規の保険のみならず、すでに提供している保険にも適用する。石炭火力、石炭鉱山、石炭燃料のセメント製造なども対象に入る。これらの事業を抱える企業は、それらの比率を全事業の30%以下にまで減らさないと、現行の保険契約終了後、契約を延長できなくなる。

 

 企業は他社の保険に乗り換えることはできるが、スイス再保険から保険を打ち切られたという事実は、当該企業のESGリスクの高さを市場に証明することにもなる。

 

 スイス再保険が本業の保険提供の停止という措置に踏み切った背景は、保険会社にとって、温暖化の加速で自然災害の激化等に伴う企業向け保険支払の増加という、保険会社自体が抱えるリスク顕在化の問題がある。対象企業の温暖化関連の持続可能性リスクを、保険付与の有無を通じて制御するとともに、保険業が本業を通じて企業の低炭素化移行を支援するアプローチを明確に示したことになる。

 

 同社は今回の措置の対象となる保険契約を現時点で、どれくらい抱えているかは明確にしていない。ただ、保険提供停止を石炭関連だけでなく、石油・ガスなどの他の化石燃料関連事業にも拡大する可能性も示唆している。すでに同社は、北極海での深海掘削事業等への保険提供は否定している。

 

CUOのEdouard  Scmid氏
CUOのEdouard Scmid氏

 

 グループの最高引受責任者(CUO)であるEdouard Schmid氏は「『石炭方針』の実践は、われわれのビジネス活動が、温暖化抑制のパリ協定と、それを支える各国の温暖化対策に適合することを確認する大きなステップである。われわれは顧客・企業が低炭素経済への移行に適合するためのベストソリューションを、企業と一緒になって見出すために働いていく」と述べている。

 

 スイス再保険はグループとして、「サステナビリティ・リスク・フレームワーク(SRF)」を設定している。SRFでは、石炭のほか、森林・紙パルプ・パームオイル、ダム、防衛、鉱山、原子力不拡散、石油・ガスの7分野を「要注意セクター」として、これらの分野の人権、環境保護を重視する活動を、保険提供と投資の両面でとっている。今回の措置は、このフレームワークにも沿っている。

 

 スイス再保険が保険提供停止の基準とする「30%以上」は同時に、同社の資産投資の目安でもある。同社は2016年の初めから、収入の30%以上が石炭関連事業あるいはその石炭火力発電のように燃料使用となっている企業に対する投資は、投資資産が減価等する「座礁資産」のリスクがあるとして投資対象から除外している。

 

 欧州の保険会社では、ドイツのAllianzが2040年までにすべての石炭関連事業の保険引き受けと投資から離脱することを宣言しているほか、同じドイツの再保険会社ハノーバー再保険も先月、収入の25%以上が石炭関連の企業を投資対象から除外することを公表している。さらに、フランスのAxa、スイスのZurichなども「石炭離れ」を鮮明にしている。

 

 温暖化の加速で保険会社が直面する課題は、欧州だけでなく日本でも同じ構造にある。日本の損害保険大手が今後、どう追随するかが注目される。

http://www.swissre.com/media/news_releases/nr_20180702_swiss_re_establishes_thermal_coal_policy.html