HOME4.市場・運用 |日本のTCFDへの署名企業、27社に。新たにリコー、双日、日興アセットマネジメントが署名。日本企業の署名数、アジア全体の半数を占める。署名の次は実行だ(RIEF) |

日本のTCFDへの署名企業、27社に。新たにリコー、双日、日興アセットマネジメントが署名。日本企業の署名数、アジア全体の半数を占める。署名の次は実行だ(RIEF)

2018-09-03 23:00:18

TCFD9キャプチャ

 

 金融安定理事会(FSA)の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が求めた気候関連情報の財務報告書への開示報告を支持する企業リストに、8月は、新たに3社の日本企業が署名、署名企業数は27社に達した。日本企業の署名数はアジア全体の半数を占めている。署名企業の増加は、気候変動のぼす影響把握を目指す日本企業の「存在感」を示すが、今後はその具体化が期待される。

 

 TCFDへの署名企業数は8月末時点でグローバルに390社を超えた。このうち、アジアは54社と欧米より少ないが、その中で、日本企業の署名は着実に増えている。8月にTCFD支持の署名をしたのは、事業会社ではリコー、双日の2社、金融機関で日興アセットマネジメントの合計3社。

 

 この結果、金融機関と事業会社の数は12ずつで同数となり、加えて金融庁など公的機関等3者を合わせて27社となった。金融機関は大手は出そろっており、今後はあまり増えないとみられるが、事業会社は今後も増えそうだ。

 

 他のアジア諸国では、シンガポールが9社、中国6社、インド5社、香港3社などと限られている。韓国はゼロ。東南アジア諸国(ASEAN)も、ベトナムが証券取引所の署名1件だけ。

 

 日本企業が比較的、順調に署名企業数を増やしている要因として、まず、欧米企業が先頭を切って署名していることから、グローバル市場で競う日本のトップ企業が、徐々に追随したことがあげられる。また各業界のトップ企業が業界初の名を求めて署名する動きも起きている。さらにそうした動きに横並ぶ形で、国内の同業他社等の追随署名も出てきた。国内でのESGブームで、「TCFD支援」が一つのESG活動に位置付けられている点も、企業の背中を押していると思われる。

 

 問題は署名から実行である。TCFDの報告に沿って、自社、自分が属する産業の気候変動リスクとビジネス機会を、財務報告書(日本は有価証券報告書)などに、いつ、どのように開示するのかという実行を、署名企業は当然、次のステップとして求められるからである。

 

 特に、TCFD報告が盛り込んだシナリオ分析による気候変動影響把握を、果たして適格にできるのか、という点はどの企業にとっても大きな課題だ。パリ協定の目標である1.5℃~2℃目標や、ビジネス・アズユージュアルなどの各シナリオ分析を描き、それを経営戦略、ガバナンスにどう反映させるか。

 

 署名はライバル他社を追いかければ対応可能だが、自社の企業価値への影響分析は、同様の横並びの視点だけで出せるわけではない。方法論が不可欠だ。同時に、影響度合いに基づく経営戦略の変更も避けては通れない。まさに将来を見据えた経営判断が問われる局面に向かっている。

 

https://www.fsb-tcfd.org/