HOME8.温暖化・気候変動 |自然災害増大で、2017年のグローバルな保険金支払額は過去最高。米ハリケーン被害等が影響。欧州主要保険会社は赤字に。保険契約増加で再保険ビジネスは改善方向(RIEF) |

自然災害増大で、2017年のグローバルな保険金支払額は過去最高。米ハリケーン被害等が影響。欧州主要保険会社は赤字に。保険契約増加で再保険ビジネスは改善方向(RIEF)

2018-09-08 00:48:48

IRA1キャプチャ

 

  温暖化等に起因する自然災害の増大で、2017年の欧州の主要保険会社(生保を除く)が不動産関連の被害保険支払等で、赤字になったことがわかった。保険分析の Insurance Risk Data(IRD)がまとめた。米国で発生したHarvey等のハリケーン被害のほか、メキシコの地震被害などが影響した。グローバルベースでの保険会社の保険金支払い額も昨年は1415億㌦と、2000年以降の平均年間支払額の倍以上で過去最高額となった。

 

 IRDによると、保険引き受けの収益度を測る Combined Ratio (COR)は欧州の主要保険機関の場合、昨年は100%の102%だった。EU+周辺欧州国のEEA地域の保険会社の場合、12種類の保険契約のうち、火災、その他不動産損害、医療支出、海上輸送、陸上輸送の5分野でCORが100%を上回った。

 

 CORは100%を超えると、支払い費用のほうが保険によるプレミアム収入を上回ることになり、保険業の赤字を意味する。今回、赤字の対象保険分野は全体の半分以下だったが、中心となる不動産だけで 全体のプレミアム収入の23%分の損失となり、その他も損失額が大きかった。

 

大きな被害を出したハリケーンHarvey
       大きな被害を出したハリケーンHarvey

 

 グローバルな保険会社の経営状況をみると、自然災害による2017年の保険金支払い額1415億㌦に達し、2000年以降の平均年間支払額の600億㌦の倍を超える過去最高額に達している。

 

 格付機関のFitchや Moody’s、AM Bestによると、保険会社のこうした業績の悪化は、その損失をカバーする再保険会社にとってビジネス拡大につながる面もあると指摘している。Moody’sのシニア・クレジット・オフィサーのJames Eck氏は「気候関連災害の増加によって、保険会社の再保険ニーズが増え、再保険事業者にとってより有益なビジネス機会になる」と評している。

 

 保険会社は保険金支払い増加を受けて、引き受け保険料を引き上げるが、大規模なハリケーン被害を受けた米国の保険会社は2018年1~4月の引き受け率を2017年より約10%引き上げ、年半ばには更新保険料も引き上げた。ただ、被害のない不動産の保険料は6~7月に改善し、さらに逆に低下している。

 

世界中で高まる洪水リスク
    世界中で高まる洪水リスク

 

 欧州の4大再保険会社(ハノーバーRe、スイスRe、ミュンヘンRe、Scor)のCORは100%~114%といずれも赤字だった。ただ今年の6月には回復している。Fitchによると、今年はほぼ100%に回復するとみている。もっとも、今後、影響の大きい自然災害が発生する可能性もあると警告している。

 

 ただ、Fitchは今週に入って、再保険会社の格付を「安定的」に上方修正した。これは2013年以来初めてのことだ。2017年の赤地は記録となったが、保険機会の増大というよりも、災害増加に寄る保険契約の増大等による回復力への期待とのことだ。

 

 Fitchは個別保険会社の評価では、Lloyd’s of Londonとバミューダ拠点のAxisについて、2017年の自然災害による損失と、大災害対応の引き受けに傾斜しすぎているとの評価からネガティブにみている。一方、同じバミューダのXLについては評価を改善した。保有保険契約のリスクの違いとみられる。

 

 米国では、今年になって発生したハリケーンLaneが、熱帯性サイクロンとしては、昨年のHarveyに次いで過去2番目の雨量を記録。将来、豪雨による洪水のリスクが高まっていることを示唆した。同時に、森林火災の増大も明確になっている。いずれも温暖化の影響が大きい。

 

http://www.insuranceriskdata.com/