HOME10.電力・エネルギー |世界での化石燃料事業への投資資金引き揚げ額6兆2400億㌦に達する。日本のGDP総額を大きく上回る。保険会社、年金基金、ソブリンファンドが主導。米コンサルが推計(RIEF) |

世界での化石燃料事業への投資資金引き揚げ額6兆2400億㌦に達する。日本のGDP総額を大きく上回る。保険会社、年金基金、ソブリンファンドが主導。米コンサルが推計(RIEF)

2018-09-16 00:00:42

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  米国のESGコンサルのArabella Advisorsは、グローバルな機関投資家等による石炭等の化石燃料関連事業からの投資資金引き揚げ(Divestment)が、ほぼ1000機関、総額6兆2400億㌦(約693兆円)に達したと公表した。これは日本のGDPよりも25%も大きい規模だ。引き揚げ資産額は2年前に比べて24%増、4年前に比べると120倍に膨らんだ。

 

  6兆2400億㌦のDivestmentの主要な担い手は、保険会社、年金基金、それにソブリン・ウェルスファンド。そのうち、保険会社が総額のほぼ半数の3兆㌦強の資金を化石燃料関連企業への投資から引き揚げた。また大学や宗教団体、健康関連などの社会的ミッションを重視する組織の取り組みも増えている。

 

 温暖化を加速させる石炭等の化石燃料事業へ投資資金振り向けるのを止めようというDivestment キャンペーンが始まったのは2011年。米国の大学での学生たちの声が最初だった。それから、わずか7年で引き揚げ資金額が日本のGDP(2018年3月末、555兆円)より24.8%も上回った計算だ。

 

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 この推計値には、将来の新規投資を見合わせるという公約は含まれていない。現在の投資ポートフォリオからの資金引き揚げ分だけをまとまめたものだ。Divestment実行組織数は、2年前の688団体から985団体に4割強も増えている。Divestmentを実行する組織が属する国は37カ国に拡大しており、そのうち66%は米国以外の国で実施されている。

 

 Divestment活動にもっとも積極的なのは、欧米の保険会社の行動だ。保険会社は自らの損害保険で気候変動による自然災害増で保険金支払いが増えており、温暖化の原因企業向けへの投資は自らの業務に相反することが明瞭になっているためだ。

 

 Divestment行動を明確に打ち出ているのは、仏Axaや英ロイズ・オブ・ロンドン、スイス再保険など15社。Axaの場合、石炭等の化石燃料関連の収入が30%以上ある企業の株・債券を投資対象から除外する政策を導入、ロイズ・オブ・ロンドンも石炭を除外規定に明記した。

 

 ソブリンウェルスファンドもインパクトを与えている。アイルランドは財務省管轄のソブリンファンド「アイルランド戦略投資ファンド(ISIF)」の80億ユーロ(1兆500億円)の投資ポートフォリオから石炭関連株を今後、5年の間に段階的に売却する法律を制定した。 ノルウェーのソブリンウェルスファンドはすでに3年前に石炭関連株をDivestし、目下、国際石油関連株の取り扱い作業に入っている。

 

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 Arabellaは、「急速なDivestmentの進展と、化石燃料の使用を抑制する動きの広がりは、化石燃料業界にとって重要なネガティブ・インパクトになっている」と指摘する。具体的には同業界にとっての資本コストの増加とコンプライアンス費用の増大、さらに、業務の拡大の鈍化によるCO2等の排出量の直接的な減少も顕在化している、としている。

 

https://www.arabellaadvisors.com/wp-content/uploads/2018/09/Global-Divestment-Report-2018.pdf