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欧州電力取引市場で、ノルウェーの著名投資家が大損。気候変動の影響で自国の水力発電価格と、ドイツのカーボンクレジット価格の変動を見誤る。気候変動が金融取引の攪乱要因に(RIEF)

2018-09-14 16:14:11

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  欧州の電力市場取引で、ノルウェーの著名投資家が多額の損失を出した。損失額は明確ではないが、現時点で穴埋めのために総額1億1400万ユーロ(約149億円)が投じられると報道されている。同投資家はノルウェーとドイツの電力価格の裁定取引をしていたが、ノルウェーでの大雨で水力発電価格が低下する一方で、ドイツのカーボン価格は上昇してスプレッが拡大、スプレッド縮小と見込んでいた同投資家のポジションをショートさせたという。

 

 損失を出したのはノルウェーの著名投資家のEinar Aas氏。同氏は20年間にわたって欧州の電力取引で大口取引を続け、2016年にはノルウェーの納税者一位にランクされたほどの富裕投資家として知られている。通常、ノルウェーとドイツの電力価格は相関性が高く、スプレッドはあまり拡大しない。

 

Aas氏は「シャイ」でほとんど人前に出ない伝説の投資家とされてきた
Aas氏は「シャイ」でほとんど人前に出ない伝説の投資家とされてきた

 

 しかし、ノルウェーでは先週来、大雨が降り続け、水力発電が活発になったことで電力価格が通年よりも低下した。一方で、EUが導入している排出権取引制度のクレジット価格(EUA)は、パリ協定の発効後、CO2排出量の多い石炭火力発電事業者などからのクレジット購入需要が強まり、価格は上昇傾向を続けている。このため両市場のスプレッドは通常の17倍にまで拡大していたという。

 

 これに対して、Aas氏のポジションは逆に、スプレッドが縮小する方向に投資し、薄いスプレッドに多額の資金を投じて安定的に稼ぐ手法だったとみられる。ところが「異常なスプレッド拡大」が長期化し、同氏は投資を継続するための保証金の支払いができなくなったとみられる。Aas氏は「私のポジションは市場の流動性に比べて大き過ぎた」とのコメントを出した。同氏は個人破産の可能性があると報じられている。

 

 .欧州で電力取引を提供しているNasdaqは、Aas氏の取引を停止するとともに、損失の清算のために緊急基金の取り崩しを会員企業に通知した。現在のところ、損失のうち700万ユーロをNasdaqがカバーするが、大半の1億700万ユーロは基金を活用するとしている。損失がその範囲で収まるのかどうかは不明。Nasdaqは、Aas氏の清算取引をどこが引き受けたかについてもコメントしていない。

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 ノルウェー国営の発電会社の Statkraft と、電力販売のHafslund E-CO Group はともに、緊急基金の取り崩し分のカバーすることを明言している。またスウェーデンの金融監督当局(FI)は今回生じたデフォルトは株や債券デリバティブの清算には影響を与えない、とコメントしている。

 

 今回の投資家の破綻が、金融システム不安につながる可能性は小さいとみられるが、Aas氏が投資判断を見誤った要因が「温暖化の影響」である点であることは見逃せない。ノルウェーでの大雨の継続は、この夏、北半球を襲った異常気象の影響の一つとみられる。カーボンクレジット価格の上昇は、そうした気候変動対策に導入されたもので、ともに温暖化要因が、熟達の投資家の投資判断の想定を超えたために投資ミスを引き起こしたといえる。

 

 気候変動が経済活動に及ぼす影響が、金融市場の取引にも及んでいることを示す事例となった。

 

https://www.reuters.com/article/us-nordic-power-nasdaq/nordic-power-traders-loss-costs-nasdaq-and-members-114-million-euros-idUSKCN1LT28G

https://www.irishtimes.com/business/markets/trader-blows-100m-hole-in-nasdaq-s-nordic-power-market-1.3628329