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西欧諸国、「もはや石炭火力の新設はない」。米銀ゴールドマンサックス幹部が指摘。米トランプ政権との政策的な違いとともに、石炭火力のコスト上昇による「経済的理由」を指摘(RIEF)

2018-10-04 16:42:24

coalplant1キャプチャ

 

  米トランプ政権は米国市場での石炭火力発電事業の復活を目指す政策を掲げる。だが、欧州、特に西欧では流れが変わっている。そうした流れを踏まえて、「もはや、石炭火力の新設は終わったようだ」との見方を米銀、ゴールドマンサックス幹部が指摘、注目を集めている。

 (写真は、オランダのロッテルダム近郊の石炭火力発電所)

 

 「石炭火力新設時代の終焉」との見方を示したのは、ゴールドマンサックスの自然資源分野のグローバル共同責任者のGonzalo Garcia氏。先週、ノルウェーのオスロで開いた会議に出席。「トランプ政権と異なり、欧州の政治家たちは地球温暖化に最も悪い影響を及ぼす化石燃料の使用を停止するため懸命に活動している」と、米欧の政治環境の違いを強調した。

 

ゴールドマンサックスのGonzalo Garcia氏
ゴールドマンサックスのGonzalo Garcia氏

 

 同氏は、そうした政治環境の違いの背景に、経済的な要因があると、指摘した。「特に西欧において、もはや石炭火力発電所の新設はないと個人的に思っている。その理由は、多くのOECD諸国にとって、石炭火力発電所の建設は次第にコスト高になっている」という点だ。

 

 同氏が重視するのは、石炭火力発電所の燃料となる石炭価格の高騰と、CO2排出量をカバーするために市場で購入するカーボンクレジットの高騰の二つの点。欧州の代表的石炭輸入港であるオランダのロッテルダム港での引き渡し価格は、㌧当たり100㌦台となっており、過去5年間で最高値となっている。相対的に割高な日本市場ではすでに110㌦台に移行している。http://rief-jp.org/ct4/83442

 

 また、EU-ETSのクレジット(EUA)価格も、趨勢として上昇基調を辿っている。EUA価格は17年5月の4.38ユーロから、9月には一時25ユーロ台まで上昇、その後、ノルウェーの著名投資家が裁定取引で大損を出したことからいったん下落したが、現在は、21ユーロ台で推移している。http://rief-jp.org/ct6/82768

 

 カーボンクレジットは石炭等の化石燃料事業者やCO2排出量の多い事業者が、自らのCO2排出量を相殺するために購入する。したがって、クレジット価格の上昇は石炭火力や事業者のコストアップにつながる。つまり、西欧地域で石炭火力発電を新設する場合、燃料価格とクレジット価格の両面で、高コスト構造が強まっているというわけだ。

 

 パリ協定の実現という政治的目標に加えて、こうした経済的な理由は、欧州の政治家を「脱石炭火力」に駆り立てるには、十分な要因といえる。英国は国内に8機残っている既存の石炭火力発電所を2025年までに閉鎖する方針を打ち出している。フランスのマクロン政権も、2022年までにすべての石炭火力を停止することを宣言している。

 

 ドイツは国内に豊富な化石燃料資源(褐炭)を保有し、一方で2020年までに脱原発する政策方針であるため、明確な石炭火力停止宣言はまだしていない。しかし、欧州委員会との調整は継続中で、年末にも脱石炭火力発電のスケジュールが示される見通しだ。英国はBrexitでEUから離脱する方向だが、オランダやベルギー等も同様に脱石炭火力を鮮明にしており、EUの中心となる西欧諸国の動きは、EU全体としての脱石炭政策を後押しする。

 

 もちろん、EUの中でも東欧諸国では、ポーランドなど、化石燃料に依存するエネルギー構造の国はまだ残っている。しかし、より経済的に豊かな西欧諸国では、太陽光や風力発電等の再生可能エネルギー発電の市場も拡大し続けており、Garcia氏が「最後の石炭火力新設」はもはや過ぎてしまったのでは、との問いかけは、多くの人々が気付く風景の変化ともいえる。

 

 こうした西欧諸国での「脱石炭火力」の状況は、金融機関や機関投資家等による投融資行動を通じて、他の地域にも波及する形になりつつある。欧州の年金基金等はESG視点による投資銘柄の選別を強化しており、特に温暖化加速に影響を及ぼす石炭等の化石燃料関連企業株に対しては、グローバルに投資引き揚げ(Divestment)等の選別を加速しつつある。

 

 Garcia 氏は「石炭を燃やし続けることは、次第に議論を呼ぶ形になっている。石炭火力事業が将来的に大きな損失を伴うことは明らかになってきた」と述べている。金融機関としては大きな損失を抱えることは、投融資対象としてのリスクが高まっていることを意味する。

 

http://ieefa.org/goldman-sachs-coal-construction-in-western-europe-is-over/